遺産相続が「争族」になりやすい人や親族関係には特徴があります。そうしたパターンをしっかり理解していれば、相続トラブルの回避もそれほど難しくはありません。この記事では相続で揉めやすい人・揉めにくい人の差と、トラブル回避の方法を紹介します。
遺産相続が「争族」になるケースは多い
遺産相続は常に円満に運ぶとは限りません。むしろ家庭環境や遺産の状態など、トラブルの種は無数にあります。実際に相続が「争族」になるケースは数多く、時には裁判沙汰に発展してしまうこともあるのです。
もちろんトラブルにはそれぞれ原因があります。相続トラブルを回避するためにも、その原因を理解することは非常に大切といえるでしょう。
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揉める人と揉めない人の差
相続でトラブルになる、つまり相続で「揉める人」と「揉めない人」には、相続の状況や関係者の特質にいくつかの特徴があります。
遺言書の内容
遺言の状況をめぐってトラブルになりやすいのが、遺言書の内容が「不公平に感じられる」ケースです。たとえば「特定の相続人(もしくは法定相続人以外の人)にすべての財産を相続させる」といった極端な内容や、「愛人に財産を譲る」のように実の家族には納得しにくい内容の場合、相続人の中に不満を募らせる人がいたとしても不思議ではありません。
遺言書が不完全なためにトラブルになることもあります。被相続人が自己流で遺言書を作成した結果、法的には無効となった遺言書の解釈をめぐって相続人同士が衝突する可能性も考えられるでしょう。
生前贈与の有無
特定の相続人や相続人以外の人が高額の生前贈与を受け取っていた場合、他の相続人が「生前贈与された分を含めて分割すべき」と主張して、対立に発展するケースがあります。
生前贈与された利益を特別受益と認めるかどうかや、持ち戻しの金額計算をめぐったトラブルも考えられます。
被相続人の性格
自分に都合のよい主張に固執して、他の相続人の意見を聞こうとしない相続人もトラブルの種です。たとえば自宅以外の財産はほとんど残っていないのに「自分は自宅を相続する」と言い張るケースが考えられるでしょう。
同じく、実家の土地と建物について複数の相続人が「相続したい」「売却したい」と互いに譲らないケースも考えられます。
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家族関係・親族関係
もともと家族同士や親族同士の仲が悪い、もしくは疎遠になっている場合もトラブルになりがちです。仲違いを避けるために普段は顔を合わせないようにしていても、相続が発生すればどうしても葬儀や遺産分割協議などで接触が増えます。そのような場で互いの主張がぶつかれば、大きなトラブルに発展しても不思議ではないでしょう。
相続人の中に、被相続人からえこひいきされていた人や、逆に被相続人に非行(虐待や侮辱など)を働いていた人がいた場合、被相続人との関係や相続人同士の関係が極端に悪化することも考えられます。
親族の介入
遺産分割協議は相続人同士で行うのが鉄則です。しかし現実には相続人以外の親族や、相続人の配偶者などが遺産分割協議に口を出してくるケースが少なくありません。ただでさえ複雑な協議が、第三者の関与で余計に複雑化しても不思議ではないでしょう。
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介護の有無
被相続人と同居して、日常の世話や介護をしていた相続人がいる場合も、他の相続人との間でトラブルになる可能性があります。介護には負担が伴うため、その報酬として余分の財産を求める相続人がいるのは当然です。
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未知の相続人
相続開始後に現れる「未知の相続人」は、大きなトラブルを招く可能性があります。典型的な例は、被相続人に隠し子がいた場合や他の相続人に知られずに養子縁組をしていた場合などです。
もちろん隠し子であっても、その子が認知されている限り、他の子供と同じ相続人として扱われます。養子も同様です。とはいえそのことに他の相続人が納得できない場合、感情的な対立からトラブルに発展してしまうでしょう。
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遺産の内容
相続財産の内容もトラブルの原因になることがあります。特にトラブルの種になりがちなのが「不動産」です。不動産は維持管理に手間がかかるうえ、相続の際には分筆などの手続きが必要になることが少なくありません。このためだれが不動産を相続するか、どのように分割するかで揉めがちですし、場合によっては利用価値のほとんどない不動産を互いに押し付け合うケースもあります。
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遺産の管理方法
特定の相続人、たとえば被相続人と同居していた配偶者や子のひとりが遺産を管理している場合、使い込みや私物化が疑われる(あるいは実際に使い込みなどが行われる)ケースもあります。場合によっては、遺産分割協議の際に財産の一部を隠されたり破棄されてしまう可能性も否定できません。
このような疑いや事実があれば、相続人同士の深刻なトラブルに発展してしまいます。
遺産相続のトラブルを避けるには
上記のようなトラブルの原因に対しては、さまざまな対処方法が考えられます。
遺言書の内容に気を配る
被相続人が遺言書を作成する場合、その内容に気を配ることで多くのトラブルを防ぐことができます。
まず最初に気を配るべきなのは遺言書の形式です。遺言書には自筆証書遺言や公正証書遺言といった種類がありますが、中でも自筆証書遺言については、自己流で作成してしまうと無効になりかねません。相続関連のノウハウ本などで学ぶのもよいですが、万一のトラブルを避けるためにも行政書士などの専門家にサポートを依頼すべきでしょう。そもそもそのようなトラブルになりにくい、公正証書遺言を作成するのも有効な手段です。
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遺言書で指定する相続人や、相続人ごとの相続分に気を配ることも大切です。生前に目をかけていた人や世話になった人により多くの財産を残したいという気持ちも理解できますが、あまり極端な内容(すべての財産を与える、など)だと他の相続人の不満につながります。
公平な配分をするか、少なくとも特定の相続人を優遇することについて遺言書の中にきちんと書き添えておけば、トラブルの可能性を減らすことができるでしょう。どのような内容にすれば関係者が納得するかわからない場合、専門家に相談するのも一手です。
相続人同士でよく話し合う
遺言書が存在しない場合は遺産分割協議で相続分を決定します。遺産分割協議の場では、互いが真摯に腹を割って話すようにすればトラブルになりにくいでしょう。普段は疎遠な親族がいたとしても、まずは話し合いによって理解し合えるよう努力してみることが大切です。
どうしても当事者同士で話し合うことが難しいようなら、法律の専門家からアドバイスをもらうこともできます。その際は相続の内容や予想されるトラブルに合わせて、適切な専門家を選ぶようにしましょう。
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相続人調査・相続財産調査を徹底する
未知の相続人が後から発覚することのないよう、相続発生後には念入りな相続人調査が欠かせません。同じく財産調査も徹底する必要があります。
遺産には現金から預金、道産、不動産、借金(マイナスの財産)などさまざまな種類があるため、こうした調査には時間が必要です。もし「時間がない」「どうしていいかわからない」という場合は、専門家に調査を依頼することもできます。
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まとめ
相続にはさまざまなトラブルの種がありますが、それでも相続がきっかけで親族同士が仲違いをしてしまうような事態は避けたいものです。この記事を参考に、そして専門家を上手に利用して、ストレスのないスムーズな相続を目指していきましょう。