売れない土地を相続したらどうすればいい?有効な対処方法と注意点について解説

さまざまな相続財産の中でも、土地は特に価値の高い相続財産です。しかしすべての土地が「価値が高い」とは限らず、中には売りたくても売れない土地も存在します。この記事では売れない土地を相続した場合の対処方法について説明します。

 

売れない土地の相続について

相続では「せっかく土地を相続したのに、利用する予定もないうえ売ることもできない」というケースがあります。

 

買い手がつきにくい土地とは

売れない土地、つまり買い手がつきにくい土地とは「利用しにくい土地」です。たとえば市街化調整区域に建物を立てるには原則として「開発許可」が必要ですが、この許可は非常に厳しいため、簡単には建物を建てられません。

また農地は農業を営まない人にとっては本来の用途で利用することが難しい土地ですが、かといって建物を建てるには「農地転用」が必要です。農地転用は都道府県知事や市町村長が許可しますが、許可基準はとても厳しく中にはそもそも許可が下りない種類の農地も存在します。

山林も同様に、活用も売却も難しい土地です。

関連記事:『農地の遺産相続をする際の手続きとは?相続を望まない場合についても解説

 

不動産が「負動産」になることも

こうした土地(不動産)は「負動産」と呼ばれることもあります。主な理由として挙げられるのは以下のようなデメリットです。

  • 固定資産税の発生
    有効利用できない土地であっても、固定資産税が発生します。税額は立地や地目によって変わり「地方都市の利用しにくい土地」は低額ですが、それでも敷地面積が大きければそれなりにまとまった額になります。使えない土地のために毎年多くの費用が発生するというのは大きなデメリットといえるでしょう。
  • 管理責任が発生する
    土地の管理責任は所有者にあります。草木が伸び放題になって周囲の土地や隣接する道路を覆ってしまう、ゴミの不法投棄場所になる、害虫・害獣の巣窟になるといったことがないよう、あるいは空き家になった建物や塀の倒壊、土地の崩落といった事故が起きることのないよう、しっかり管理しなければなりません。もし所有する土地が原因で周囲に被害が及んだ場合、損害賠償請求をされる可能性もあります。
  • 次の代に迷惑をかける
    利用しにくい土地は自分の代だけの問題ではありません。当面は相続した他の財産を取り崩して固定資産税や管理費用をまかなえても、次の世代の相続人もそのようにできるとは限りません。次世代以降に迷惑をかけることがないためにも、できるだけ早いうちに問題を解消しておくべきです。

 

売れない土地の相続対策

売れない土地や利用しにくい土地の相続対策としては、以下のようなものが挙げられます。

 

相続放棄

根本的な対策は「相続を回避する」ことです。相続放棄をすれば相続人としての地位が消滅するため、問題の土地を相続することはありません。相続放棄は相続があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続(申述)します。

ただし相続放棄をしてしまうと、土地に限らず「一切の財産」を相続できなくなります。利用価値の高い土地だけ手元に残す、自宅の土地や建物だけ相続するといったことはできないため要注意です。

なお相続放棄された土地は、共同相続人や次順位の相続人がいる場合はそれらの人が引き継ぐことになります。場合によっては「使えない土地を押し付けた」とみなされ、親族間のトラブルになる可能性も否定できません。相続放棄をする場合は、事前に他の相続人や親族としっかり話し合うことが大切です。

関連記事:『相続放棄すべきケースとは?相続放棄の申述方法についても解説

 

売却する

いったん土地を相続したうえで、それを売却するというのもポピュラーな手段です。そもそも「売れない(売りにくい)」土地といっても本人や周りがそう思っているだけで、他人にとっては利用価値があるかもしれません。まずは地元の不動産会社や大手の不動産会社に相談してみるのがお勧めです。

ただし地目(田、畑、宅地、山林といった土地の区分)や立地によっては、一般の不動産会社が取り扱っていないことがあります。またあまりにも資産価値の低い土地は、不動産会社に敬遠されることも少なくありません。そのような場合は専門の不動産会社に相談するようにしましょう。

なお田畑などの農地を売却する場合は、地元の農業委員会に買い手をあっせんしてもらうのが一番スムーズです。

 

賃貸する

他人に賃貸することで収益化を図ることができます。売却の場合と同様、「利用価値がない」と思っているのは自分だけで、他の人にとっては借りる価値のある土地かもしれません。

借り手を見つける場合も、まずは地元の不動産会社や専門の不動産会社に相談するのが一般的です。また農地の賃貸については、農業委員会のあっせんサービスを利用できます。

 

寄付する

売ることも貸すこともできない土地であれば、無償で寄付してしまうのも一手です。寄付の相手としては個人、法人(団体)、自治体が考えられます。

ただし利用価値のない土地は寄付された側も扱いに困ってしまうため、寄付がすんなり受け入れられるとは限りません。個人や法人であれば固定資産税を支払わなければなりませんし、自治体にとっても、寄付を受けることで固定資産税の財源を失うというデメリットがあります。

寄付を検討する場合はまず相手と相談してみて、相手にとってのメリットがあるかどうかを確認しましょう(たとえば相手が寄付したい土地に隣接する土地を持っている場合、一体化することで利用価値が生まれる可能性もあります)。

 

行政に相談する

どうしても処置に困る土地については、自治体に相談してみることもお勧めです。必ずしも有効な解決策が見つかるとは限りませんが、たとえば自治体によっては「空き家バンク」のようなサービスを運営しているため、そこに登録して様子を見ることもできます。

 

放置はNG

逆に絶対やってはいけないのは、相続登記をしないまま土地を放置することです。中には「相続登記をしなければ相続が発生しない」と誤解している人もいますが、そもそも登記というのは第三者に対する証明にすぎません。名義が先代のままであっても相続によって所有権は移動します。つまり固定資産税の支払い義務や、管理責任からは逃れられません。

また従来は相続登記の放置は義務ではありませんでしたが、法改正により2023年4月28日までに義務化されます。新しい制度では「取得を知った日から3年以内」に登記を行わない場合、10万円以下の過料というペナルティを受けることになります。

 

相続放棄する場合の注意点

相続放棄をしても、場合によっては管理責任が残ることがあります。たとえば相続人がひとりだけであれば、その人が相続放棄することで土地の所有者はいなくなります。複数の相続人が全員相続放棄をした場合も同様です。

しかし土地が存在する以上、誰かがその管理をしなくてはなりません。草刈りなどの環境維持はもちろん、土地や建物が原因で事故が発生した場合は損害賠償責任を負うこともあります。

民法第940条では、管理義務を持つ人についてこう規定しています。

相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。


ここに書かれている通り、相続放棄をしても相続財産の清算人(精算手続のために裁判所が選任する弁護士など)が選ばれるまでは「相続放棄をした人」が管理責任を負います。ちなみに複数の相続人が相続放棄をした場合、管理責任を負うのは一番最後に相続放棄をした人です。

なお土地の所有者ではないため、固定資産税の支払い義務は発生しません。

関連記事:『相続放棄が認められない相続財産とは?相続で失敗しないためのポイントを解説

 

まとめ

売れない土地の相続にはさまざまなデメリットがあります。もし遺産の中にそのような土地が含まれているなら、相続放棄で相続を回避したり、早めの売却などを検討すべきです。どのような手段が良いかは事情によって異なるため、まずは相続の専門家に相談することをお勧めします。

 

 

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