日本中どこに住んでいても、私たちの生活にとって身近な郵便局。その郵便局内に窓口を置く「ゆうちょ銀行」も、やはり私たちに身近な金融機関です。今回はゆうちょ銀行の口座を持っている方が亡くなった場合の、相続手続について解説します。
ゆうちょ銀行とは
ゆうちょ銀行は、郵政民営化関連法によって誕生した銀行です。全国にある24,000以上の郵便局の窓口を置くほか、コンビニ(ファミリーマート)にもATMを持っているため、私たちにとって最も身近な銀行と言うことができるでしょう。
ゆうちょ銀行はもともと郵便貯金だったため、一般的な銀行とは異なる特徴を持っています。たとえば通常貯金(普通預金)の場合、1人1300万円までしか預けることができません。しかし特に高齢の方の中には郵便局時代から「定額貯金」を利用していて、現在もゆうちょ銀行の口座を持っているという人が少なくありません。
ゆうちょ銀行で残高証明書を取得する
被相続人がゆうちょ銀行に口座を持っていたら、まずはその内容(預けてある金額)を正確に把握する必要があります。そのために必要なのが「残高証明書」です。
残高証明書を手に入れるには、まず郵便局の窓口で申請をします(郵送による手続きは不可)。申請できるのは相続人と相続人の代理人です。
ちなみに残高証明書は窓口で即時交付してもらえるものではありません。残高証明請求書と必要書類の提出後、およそ10日〜2週間程度で請求者の自宅に郵送されます。必要書類は以下の通りです。
- 被相続人の死亡の事実が確認できる戸籍謄本等
- 相続人であることが確認できる戸籍謄本等
- 相続人の身分証明書(運転免許証など)
- 相続人の印鑑
手数料は証明書1通につき1,100円です。
※2022年1月17日からの新料金で、以前は520円でした。過去にゆうちょ銀行の相続手続をしたことがある方は手数料の金額に注意してください。
口座の有無が不明な場合
ゆうちょ銀行に被相続人の口座があるかどうかわからない場合、口座を持っていたことはわかっても口座番号がわからない場合は「現存照会」という手続きで調べることができます。
現存照会の申請書は「貯金等照会書」です。基本的には郵便局の窓口で入手するものですが、WEBサイトからダウンロードも可能です。
ただし用紙をダウンロードした場合も、本人確認のため手続(申請書の提出)自体は窓口で直接行う必要があります。
ゆうちょ銀行の相続手続の流れ
ゆうちょ銀行の口座も他の金融機関と同じく、名義人の死亡が確認された時点で凍結されます。その後の相続手続の流れもだいたい同じですが、「少なくとも2回は窓口に足を運ぶ必要がある(郵送による手続きができない)」点はゆうちょ銀行ならではです。
ここではここでは被相続人の死亡から口座の凍結、そして相続人への払い戻しまで、「ゆうちょ銀行の相続手続の流れ」について説明していきます。
①「相続確認表」の提出
まず最初に行うのは相続発生(被相続人の死亡)の連絡です。ゆうちょ銀行の場合は銀行側が用意している「相続確認表」という書類に記入し、それを郵便局の窓口に提出することで連絡となります。書類はWEBサイトからもダウンロードできますが、提出の際は必ず窓口に行かなければなりません(1回目の窓口訪問)。
なおゆうちょ銀行の窓口は「貯金窓口」と共通です。営業時間は平日9時〜16時までなので、時間に注意してください。
②必要書類の案内の送付
相続確認表を提出してから1〜2週間ほどで「必要書類のご案内」が郵送されます。相続手続に必要な書類は相続の状態や条件によって異なるため、必ずこの案内に記載された内容通りに書類を準備するようにしてください。
③必要書類の収集と提出
必要書類のご案内で指定された書類(戸籍謄本など)を集めて、その原本を郵便局の窓口に提出します(2回目の窓口訪問)。提出先の窓口は、原則として相続確認表を提出したのと同じ郵便局です。
④払い戻し
書類に問題がなければ代表相続人の通常貯金口座に払い戻すか、もしくは口座を代表相続人の名義に書き換えることで相続手続が終了します。払戻証書や名義書換え済みの通帳は、希望すれば簡易書留で郵送してもらえます。
手続きの所要日数
相続手続の所要日数は、最初の書類提出から案内の送付まで(①〜②)で1〜2週間、必要書類を提出してから払い戻しまで(③〜④)もおおむね1〜2週間です。トータルで1か月程度と思っておけば良いでしょう。
なお書類に不備があったり、手続きが混み合っている時期はさらに時間がかかることもあります。
ゆうちょ銀行の相続手続に必要な書類
手続に必要な書類は、相続のパターン(遺言書の有無や遺産分割協議書の有無など)によって細かく変わります。具体的な必要書類はゆうちょ銀行から送付される「必要書類のご案内」に記載されるため、ここでは代表的なものを紹介します。
- 貯金等相続手続請求書(名義書換請求書兼支払請求書)
- 被相続人の相続関係を特定できるすべての戸籍
- 相続人全員の印鑑証明書(発行から6か月以内のもの)
- 被相続人名義の通帳、キャッシュカード
- 申請者の本人確認書類(運転免許証など)
- 申請者の実印
繰り返しになりますが、ここで挙げたのはあくまで代表的な書類です。実際にはこれら以外の書類が必要なケースも多いため、必ずゆうちょ銀行からの案内を確認してください。
相続Web案内サービスについて
ゆうちょ銀行では「必要書類のご案内」の他にも、音声や画面表示による対話形式で相続手続の案内してくれるWEBサービスを提供しています。
利用環境
なお利用に必要なパソコン環境などは、次のように指定されています。
Windows |
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Mac OS |
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この他にも、帳票等を印刷するためにプリンターなどが必要です。
ちなみに利用環境はパソコン機器やソフトウェアのアップデートなどによって変更される可能性があるため、必ず最新の情報をゆうちょ銀行のWEBサイトで確認するようにしてください。
利用の流れ
相続Web案内サービスの利用の流れは以下の通りです。
①基本情報の入力
音声案内と画面案内に従って、相続に関する情報(遺言書の有無など)を入力します。
②家族情報の入力
次に被相続人の家族関係図を入力します。ただし遺言書がある場合、入力は不要です。
③必要書類の印刷
手続先のゆうちょ銀行(郵便局)がある都道府県を選択して、『同意する』ボタンを押すと相続手続に必要な書類が表示されます。この手順にはおおむね15~45分程度の時間が必要です。
④必要書類の準備(収集)
上記③で表示された書類を集めます。市区町村役場や家庭裁判所で交付される書類は一定の有効期限があるため、書類収集のタイミングには十分注意が必要です。
⑤窓口への提出
収集した必要書類を郵便局の窓口に提出します。
注意点
被相続者がゆうちょ銀行で投資信託の取引をしていた場合は相続Web案内サービスを利用できないため、必ずゆうちょ銀行(郵便局)の窓口で手続きを行う必要があります。
また被相続人や相続人の個別の事情によっては、相続Web案内サービスで案内したもの以外の書類が追加で必要になることもあります。
ゆうちょ銀行の手続きを専門家に任せるメリット
ゆうちょ銀行の手続きはそれほど難しいものではありませんが、行政書士などの専門家に依頼することも可能です。専門家に手続きを任せる主なメリットは次の通りです。
- 時間の節約になる
- ミスのない手続きをしてもらえる
- 相続に関する相談ができる
ちなみに、遺産相続の専門家にはさまざまな種類があります。自分達の相続の状況に合わせて、最適な相手を選ぶようにしましょう(その際は『遺産相続は誰に頼むのがベター?各専門家の業務範囲や費用・注意点についても解説』も参考にしてください)。
まとめ
被相続人がゆうちょ銀行に口座を持っていた場合、その口座にある預金も相続財産の一部です。遺言書で受取人の指定がある場合はその内容で、遺言書が存在しない場合は遺産分割協議によって預金の相続人をできるだけ早く決めて、スムーズな相続手続きを目指してください。