相続手続の相談はどこにすればいい?専門家・役所・銀行の使い方について解説

相続手続にはいろいろな種類があります。では自分がどのような手続きを行うべきか、いつまでに行うべきかがわからない場合、どこに相談すればよいのでしょうか。この記事では相続について相談できる専門家や公的機関などについて解説していきます。

 

相続にはさまざまな手続きがある

相続関連の手続きはさまざまです。また相続の状況によって揃える書類や行うべき手続きの内容が異なるため、初めて相続を経験する人にとっては「わからないことだらけ」かもしれません。

 

「期限付き」の手続きに注意

相続手続の中でも特に注意が必要なのは、期限付きの手続きです。これらの手続きは一定期間内に行う必要があり、期間を過ぎると権利を失ったり、ペナルティを受けたりします。

気をつけるべき主な「期限付き」の手続きは以下の通りです。

  • 相続放棄…自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月
  • 相続登記…不動産の取得を知った日から3年 ※2023年4月より
  • 相続税申告…相続の開始を知った日の翌日から10か月
  • 準確定申告…相続開始を知った日の翌日から4か月
  • 相続税の還付請求…相続税の申告期限から5年
  • 生前贈与税申告…贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日まで
  • 遺留分侵害額請求権…相続の開始を知った日から1年/相続開始の時から10年
  • 相続回復請求権…権利の侵害を知った日から5年/相続開始の時から20年
  • 埋葬料・葬祭費の請求…祭を行った日の翌日から2年以内
  • 生命保険の請求…被保険者が亡くなった日から3年間(かんぽ生命の場合は5年間)

それぞれの手続きの詳しい内容やペナルティについては、『遺産相続の時効とは?権利や手続きの時効について解説』や『遺産相続手続に期限はある?期限を過ぎた場合の対策についても解説』をご覧ください。

 

誰かに相談すべきケース

相続手続は「必ず誰かに相談・依頼しなければならない」というものではありません。相談するかどうかは、本人が持っている専門知識や経験、平日の日中に時間を確保できるか、手間や労力をいとわないか、他の相続人が協力的かなど、個別の事情に合わせて判断するとよいでしょう。

関連記事『遺産相続手続は自分でできる?専門家に依頼した方が良い場合についても解説

 

相続の相談はどこにすべきか

相続の相談先と聞いて多くの人がイメージするのは「弁護士」などの士業でしょう。確かにその通りなのですが、専門家にもさまざまな種類があります。また専門家以外にも相続についての相談を受け付けているところがあります。

ここでは相談内容に応じた相続の相談先について、その特徴と相談方法を説明します。

関連記事『遺産相続は誰に頼むのがベター?各専門家の業務範囲や費用・注意点についても解説
関連記事『相続について相談できる公的機関はどこ?内容に応じた相談先と利用上の注意点

 

書類作成の相談〜行政書士

相続の専門家の中で、もっとも「気軽」に相談できるのが行政書士です。行政書士は「行政機関に提出する書類作成」の専門家で、主に遺言書の作成サポートや遺産分割協議書の作成や、それらに関する相談に対応しています。相続手続の中でも特に手間のかかる、戸籍謄本などの収集や財産調査も行政書士の業務範囲です。

一方、相続手続の中には行政書士が行うことのできないものも存在します。たとえば

  • 登記に関する手続き(司法書士の業務範囲)
  • 裁判所に関係する手続き(司法書士・弁護士の業務範囲)
  • 相続税に関する手続き(税理士の業務範囲)
    などです。

基本的に、行政書士は「必要書類を役所から取り寄せたい」「他の相続人や財産について調べたい」「自分で手続きするのでアドバイスだけほしい」「費用をとにかく抑えたい」といったケースにぴったりの専門家といえるでしょう。

なお行政書士の費用は事務所によって違います。「遺産分割協議書の作成」だけを「6万円程度」で行っている事務所もあれば「遺産相続業務一式」を「30万円」で請け負っている事務所もあるといった具合ですが、一般的な相場としては、遺産相続手続全体でおおむね20万円〜40万円程度です。

関連記事『遺産相続の手続きを行政書士に依頼するメリットは?行政書士の選び方を解説

 

相続登記の相談〜司法書士

司法書士も行政書士と同様「書類作成の専門家」ですが、行政書士とは違い「相続登記の手続き」や「家庭裁判所への書類提出」などを行うことができます。また紛争の対象が140万円以下の、いわゆる少額訴訟で代理人になれるのも特徴です。

ただし相続に関連する訴訟は高額になることも多く、そのような場合は弁護士の業務範囲となります。また相続税に関する手続きをしたり、相続税に関する相談に乗ったりすることもできません(税理士の業務範囲です)。

司法書士の費用も行政書士と同様、事務所ごとに異なります。費用の相場は行政書士と同程度のところも多いですが、どの事務所でも相続手続を引き受けてくれるわけではありません。依頼したい内容に合わせて情報収集することをお勧めします。

 

相続トラブルの相談〜弁護士

弁護士は「法律の専門家」です。特に相続関連ではオールマイティーで、基本的に行政書士と司法書士ができることは弁護士もできます。ただし相続税に関する手続きや相談業務だけは行うことができません。

弁護士ならではの強みは、訴訟額にかかわらず、あらゆるトラブルで代理人になれることです。相続人同士がトラブルになっている場合、弁護士に相談することが問題解決の近道です。なおトラブルの相手が弁護士を雇っている場合、もう一方が素人では交渉が極端に不利になります。対等に交渉するためには、こちらも別の弁護士に依頼するのが鉄則です。

一般に、弁護士の費用は行政書士や司法書士に比べて高額になります。たとえば遺産分割協議であればおおむね20万円〜、遺言書の作成は10万〜20万円程度で、行政書士の相場の倍〜数倍程度です。依頼内容によっては「着手金」と「成功報酬」に分かれていることもあります。

もちろん弁護士事務所によって費用は異なりますが、業務の特殊性(トラブル解決ができる)ことを考えると、ある程度高額になるのは仕方ないと言えるでしょう。

 

相続税の相談〜税理士

税理士は「税に関する専門家」です。もちろん相続税や贈与税に関する手続きもこれに含まれます。税金の計算は複雑なことが多く、しかも計算方法によって実際の納税額が大きく変わることも少なくありません。もし相続税が発生するようなら、自分で手続きするのではなく税理士に依頼したほうが確実です。

相続関連で税理士に依頼すべきケースとしては、主に以下のものが挙げられます。

  • 相続税の算出
  • 相続税申告の手続き
  • 準確定申告の手続き
  • 贈与税申告の手続き
  • 将来の相続に備えた節税対策

ただし、すべての相続で相続税が発生するわけではありません。相続税には「3,000万円+(600万円×相続人の数)」という基礎控除があり、相続財産の合計額がこれを超える場合のみ課税対象となります。このため税理士に依頼するかどうかは、まずは財産調査をした後に決定するとよいでしょう。

税理士の報酬は相続財産の合計額によって変わるのが一般的です。相場としては相続遺産金額の0.5~10%程度で、たとえば財産の合計が5,000万円なら25万〜50万円程度、1億円なら50万〜100万円程度となります。他にも相続人が複数いる場合や相続税の申告期限が近づいている場合などは「加算報酬(通常の報酬の10%〜15%程度)」も加わるため、依頼する前によく確認するようにしましょう。

 

相続全般の気軽な相談〜市役所など

専門家以外の相談先として一般的なのは市役所(区役所、町役場、村役場)です。市役所では市民サービスとして相続をはじめとするさまざまな法律相談・手続相談を行っていて、市民であれば原則として誰でも「無料で」利用できます。

ただし市役所の相続相談(法律相談)はいつでも受け付けているわけではありません。ほとんどの自治体では曜日によって相談内容を分けていて、時間指定もあります。一回あたりの相談が数十分程度に限定され、同じ内容で2回以上相談できないケースも少なくありません。

参考までに、横浜市の場合は以下の通りです。

種別 実施日時 内容 相談員 法律相談
法律相談
月~木
午前:電話のみ
午後:対面のみ
金曜日
午前・午後:対面のみ
月~金曜日
9:00~12:00
13:00~16:00
25分以内 法律問題全般 弁護士※専門分野は選べません
夜間法律相談
電話のみ
毎月第2・4水曜日
18:00~20:30
25分以内 法律問題全般 弁護士※専門分野は選べません
司法書士相談
対面のみ
月~水曜日
13:00~16:00
25分以内 相続・不動産登記、成年後見、債務整理(140万以下)等 認定司法書士
公証相談
電話のみ
毎月第1・3金曜日
13:00~15:00
25分以内 遺言・任意後見契約・
賃貸契約などの公正証書
公証人

横浜市『市民相談室 (市庁舎3階)』より。『相続放棄の手続きは市役所でできる?相続発生時の市役所の活用方法について解説』もご覧ください。


なお実際に相談に乗ってくれるのは、市役所の職員ではなく弁護士などの専門家ですが、その場で具体的な依頼をすることはできません(あくまで相談のみです)。具体的に依頼したい手続きが決まっているなら(もしくは相続手続全般を依頼するつもりなら)、はじめから専門家の事務所を訪れたほうがスムーズでしょう。

 

資産運用などの相談〜銀行など

銀行などの金融機関でも相続の相談に乗ってくれることがあります。高額な資産を預けてあるなら、資産運用の相談と一緒に相続について相談するのもよいでしょう。

なお銀行の相続相談は、銀行員ではなく「提携している専門家」を紹介する形で行われます。このため本来の専門家報酬に銀行の手数料がプラスされ、かなり割高になるのが一般的です。

 

相続関連の相談先と対応内容【一覧】

代表的な相続手続と専門家・市役所・銀行の対応状況をまとめました。参考にしてください。

手続内容 行政書士 司法書士 弁護士 税理士 市役所 銀行
遺言書の作成 X X
遺言書の検認(家庭裁判所手続) X X X X
相続人調査 X X
相続財産調査 X X
遺産分割協議書の作成 X X
相続放棄の申述(家庭裁判所手続) X X X X
紛争解決・訴訟代理人 X X X X X
不動産の名義変更(相続登記) X X X X
自動車の名義変更   X    
事業相続に伴う営業許可等        
預金の解約    
有価証券の名義変更    
相続税申告          
無料相談 ※専門家の場合は事務所によって対応が異なる  
資産運用          


相続手続の具体的な相談は専門家に

相続の相談先として、専門家や市役所、銀行などについて説明してきました。基本的に相続手続は「自分で行う」こともできますが、あえて専門家に相談するメリットとはどのようなものでしょうか。

 

専門家に相談するメリット

専門家に相談する代表的なメリットは

  • 正確な(間違いのない)手続きができる
  • 時間を節約できる
  • 手間を省ける

といったものです。相続手続は一生のうち、そう何度も経験するものではありません。めったに経験しない手続きのために専門知識を学ぶのはムダが多いですし、なによりミスや勘違いで手続きを失敗してしまう可能性もあります。また日中仕事をしている人にとって、仕事を何日も休んで役所に通うのは大きな負担になるでしょう。

こうしたリスクや手間を省きたいのであれば、専門家に依頼することをお勧めします。

 

専門家を利用する際の注意点

忘れてはいけないのは、専門家に依頼すると「費用が発生する」ということです。もし相続人が1人(もしくは少数)で相続財産も少額なら、そもそも専門家に依頼するほどの手間はかからないかもしれません。

また弁護士のフルサポートではなく、行政書士から簡単なアドバイスをもらうだけで十分というケースもあります。

専門家を利用する場合は相続の状況を見極めて、どの専門家に、どの程度依頼するかを決めるようにしましょう。もし見極めが難しければ、市役所の無料相談や各専門家事務所の無料相談を利用するのがお勧めです。

関連記事『相続手続で頼れる専門家とは?行政書士と弁護士の違いについて解説
関連記事『司法書士と行政書士の違いとは?依頼できる相続手続について解説

 

まとめ

相続手続には時間も手間もかかります。行政書士をはじめとする専門家や、市役所などを上手に活用して、スムーズでストレスのない相続を目指してください。

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