相続手続で頼れる専門家とは?行政書士と弁護士の違いについて解説

相続手続の種類はさまざまです。その中には専門知識を必要とするもの、期限が決められているものも多く、人によっては専門家に依頼した方がよい場合もあります。この記事では遺産相続手続の専門家のうち、行政書士と弁護士についてそれぞれの特徴を比較していきます。

 

相続の専門家にはいろいろな種類がある

「相続の専門家」といっても、担当する(担当できる)手続きによって種類が分けられています。たとえば相続税の相談や手続きを引き受けているのは税理士、相続をめぐる裁判の代理人になれるのは弁護士、といった具合です。この他にも司法書士や行政書士も相続の専門家とされています。

参考までに、4つの専門家が担当できる主な相続業務(一例)は以下の通りです。

手続内容 行政書士 司法書士 弁護士 税理士
遺言書の作成
遺言書の検認(家庭裁判所手続) X X
相続人調査
相続財産調査
遺産分割協議書の作成
相続放棄の申述(家庭裁判所手続) X X
紛争解決・訴訟代理人 X X X
不動産の名義変更(相続登記) X X
 自動車の名義変更  ◯  X  ◯  X
事業相続に伴う営業許可等 X  X
 預金の解約  ◯  ◯ ◯   △
 有価証券の名義変更  ◯  ◯  ◯  △
 相続税申告  X  X  X  ◯


今回はこれらのうち、特に行政書士と弁護士に注目していきます。

関連記事:『遺産相続は誰に頼むのがベター?各専門家の業務範囲や費用・注意点についても解説

 

行政書士に依頼できる相続業務

行政書士は「身近な街の法律家」と呼ばれる国家資格者です。全国には約5万人が行政書士がいて、たとえば役所などに提出する書類の作成や提出代行、相談業務などを行っています。国や自治体関連の手続きは数千から数万種類といわれるため、行政書士業務の種類も非常に広いといえるでしょう。

関連記事:『遺産相続の手続きを行政書士に依頼するメリットは?行政書士の選び方を解説

 

行政書士の強み

行政書士の強みのひとつは、上で説明した通り「業務の幅が広い」ことです。基本的に、都道府県庁や市区町村役場などに提出する書類のほとんどに対応できます。また民間同士の契約書を作成したり、遺言書の作成サポートなども可能です。

また別の強みとして、各種専門家の中では比較的「費用が安い」ことも挙げられます。飛び抜けて専門性の高い業務(たとえば訴訟代理や税務申告など)を扱わない代わりに、リーズナブルな料金で書類を作成し、提出まで代行してくれるのが大きな特徴です。

 

相続業務での行政書士の役割

行政書士に依頼できる相続関連(および相続準備)の手続きとしては、主に以下のようなものがあります。

  • 遺言書の作成
  • 成年後見人の受任
  • 相続人調査(住民票・戸籍謄本の取り寄せ)
  • 相続財産調査(財産目録の作成)
  • 遺産分割協議書の作成
  • 自動車の名義変更
  • 預金の払い戻し
  • 有価証券の名義変更
  • 事業相続に伴う営業許可等

ほかにも、相続人が事業を相続した場合に必要となる各種営業許可なども行政書士の業務範囲です。なお行政書士にはそれぞれ得意分野があります。すべての行政書士事務所が遺産相続手続を取り扱っているわけではないため、依頼する際は注意してください。

関連記事:『知的障害者の相続放棄は可能?成年後見制度や家族信託制度についても解説

 

行政書士にできないこと

行政書士は幅広い書類作成業務に対応していますが、一方で取り扱うことができない業務もあります。たとえば相続関連の場合、以下の業務は他の士業の専門分野です。

  • 法律相談
  • 他の依頼人との交渉
  • 相続放棄の申述手続
  • 遺言書の検認手続
  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 相続税申告

ただし行政書士が他の士業を兼ねていたり、他の士業とのネットワークを持っている場合には、これらの業務を「窓口」として受け付けてくれることもあります。

 

行政書士に依頼する費用

行政書士の費用は事務所によって差があります。たとえば遺産分割協議書の作成だけを6万円で行っているところもあれば、相続業務一式を30万円で引き受けている事務所もあるといった具合です。

一般的には、単独の書類作成なら数万円〜10万円程度、相続手続一式では20万円〜40万円程度が相場です。これらは行政書士に支払う報酬ですが、この他に戸籍謄本や住民票などの取り寄せに必要な実費もかかります。

  • 戸籍謄本の取得:450円/1通
  • 住民票の取得:300円/1通
  • 印鑑証明:450円/1通
  • 自動車の移転登録手数料:500円

ひとつひとつの手数料は少額ですが、トータルで「数千円〜1万円程度」になることもあるため注意してください。

 

弁護士に依頼できる相続業務

弁護士は「法律に関するエキスパート」です。ドラマなどでは法廷で「弁護活動」を行うイメージが強いですが、その他にも行政書士と同じような書類作成業務、相談業務にも対応しています。

 

弁護士の強み

弁護士の強みは、法律に関係のあるほぼすべての業務を行えることです。他の士業に行えることなら、ほぼすべて弁護士も行うことができます。「万能の法律家」と言ってもよいでしょう。

 

相続業務での弁護士の役割

相続業務に絞っても、弁護士は以下の業務をすべて担当できます(一例)。

  • 遺言書の作成
  • 成年後見人の受任
  • 遺言書の検認
  • 相続人調査(住民票・戸籍謄本の取り寄せ)
  • 相続財産調査(財産目録の作成)
  • 相続放棄の申述
  • 紛争解決・訴訟代理人
  • 遺産分割協議書の作成
  • 自動車の名義変更
  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 預金の解約
  • 有価証券の名義変更
  • 事業相続に伴う営業許可等

先ほど挙げた「行政書士にできる業務」はすべて弁護士も行えますし、それ以外にも遺言書の検認をしたり、他の相続人との交渉や訴訟の代理人も業務範囲です。基本的には弁護士ひとりいれば大抵の相続手続は可能になります。

 

弁護士にできないこと

一方、弁護士にできない相続関連の手続きは「相続税の申告」です。税務関連の手続きは非常に専門性が高く、税理士だけに認められています。

とはいえ相続税が発生するのは相続財産が一定以上の場合(3,000万円+相続人の数×500万円を超える場合)なので、多くのケースで弁護士は「万能」といっても差し支えありません。

 

弁護士に依頼する費用

一見するとスキのないように見える弁護士ですが、唯一の弱点ともいえるのが「費用の高さ」です。もちろん弁護士も事務所によって費用はバラバラですが、平均的なケースでは行政書士の数倍から十倍程度の費用を請求されます。

相続手続のニーズが(比較的簡単な)書類作成だけなら、わざわざ弁護士を選ぶ必要はないかもしれません。

 

行政書士・弁護士の選び方

行政書士か弁護士か(あるいは他の士業)を選ぶうえで大きなポイントとなるのは、相続手続に出せる予算とトラブルの有無、依頼したい業務の範囲です。

 

相続手続の予算

すでに説明した通り、相続手続の費用は行政書士が比較的安く、弁護士は高額です。もし「書類提出を自分で行う代わりにとにかく費用を抑えたい」なら、必要な書類作成のみを行ってくれる行政書士を探すのが効率的でしょう。

 

相続トラブルの有無

相続人同士のトラブルが発生しているか、もしくはそのリスクが高いと判断される場合は弁護士の出番です。今はトラブルになっていなくても遺産分割協議で揉めそうな場合や、遺言状などで財産を受け取れなかった人が訴訟も視野に入れた上で「遺留分侵害額請求」を行う場合も、弁護士に依頼した方が無難です。

相続に強い弁護士なら他の相続のトラブル事例にも精通しているため、トラブルを未然に防ぐためのアドバイスを受けることもできます。

逆に、相続人同士でトラブルがない(将来のトラブルも予想されない)ケースでは、行政書士に依頼しても特に問題ないことがほとんどです。

 

依頼したい業務の範囲

相続手続きに限定した場合、行政書士に行えるのは基本的に「書類作成」が中心です。もし「ある程度は自分で行える」「むずかしい(面倒くさい)書類作成だけ依頼したい」というのであれば、行政書士に依頼した方が便利でしょう。

一方、それ以上(たとえば訴訟など)の依頼も考えているなら、弁護士や他の士業に依頼する必要があります。

 

まとめ

行政書士と弁護士では担当できる相続手続の範囲に大きな違いがありますし、依頼に必要な費用にも大きな差があります。専門家に依頼する際は、自分達の相続の状況や依頼したい内容に応じて依頼先を選ぶようにしましょう。

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