相続放棄の手続きは市役所でできる?相続発生時の市役所の活用方法について解説

相続手続を進める際、最も頻繁に訪れることになるのが「市役所(区役所、町役場、村役場)」です。市役所では各種届出や戸籍取得はもちろん、相続に関する無料相談も実施してます。この記事では相続放棄を検討している方が市役所を利用する方法について説明していきます。

 

市役所と相続放棄手続の関係

相続放棄すべきかどうか…。そのような悩みを抱えている方にとって、心強い味方になるのが行政書士などの専門家です。しかしいきなり専門家に相談するのはハードルが高いと感じる人は少なくないでしょう。

そのような人が気軽に利用できる場所が、市役所(区役所、町役場、村役場)です。

 

各種届出や書類の取得が中心

市役所で行える相続手続は、主に「届出」や「書類取得」が中心です。突然の相続発生で「どのような手続きをしたらよいかわからない」という場合は、まずは市役所を訪れて相談することをおすすめします。

 

無料の法律相談や一般向け講座の実施も

市役所では市民サービスとして、無料の法律相談を実施しています。相談の日時や頻度は市区町村によって異なりますが、ほとんどの市役所が「市内の専門家による個別相談」という形でスケジュールを公開しているようです。

また具体的な個別相談だけでなく、法律に関する一般講座を開催している自治体もあります。中には相続放棄をテーマにしたものもあるので、将来のために参加してみるのもおすすめです。

なお法律相談や一般講座についての情報は市役所のWEBサイトなどに掲載されています。

 

市役所でできる相続手続

市役所が扱う相続関係の手続きについて、具体的に紹介します。

関連記事『遺産相続は何から始める?相続手続の注意点も解説

 

死亡届

被相続人が亡くなったあと、最初に行う手続きが死亡届の提出です。提出先は被相続人が死亡した地域か本籍地、届出人の住所がある市区町村役場です。被相続人の死亡から7日以内に届け出なくてはなりません。

 

国民健康保険・介護保険の資格喪失届

被相続人が国民健康保険(および後期高齢者医療制度)に加入していた場合、「健康保険の資格喪失の届出」が必要です。提出期限は死亡から14日以内です。

介護保険の被保険者だった場合も同様で、死亡から14日以内に「介護保険資格の喪失届」を提出します。この際、護保険被保険者証も同時に返還します。

 

世帯主の変更届

被相続人が世帯主だった場合は「世帯主変更届」を提出します。提出期限は死亡から14日以内です(特別な理由がないのに届出を怠った場合、5万円以下の罰金を科される可能性があります)。

 

住民票・戸籍謄本の取得

家庭裁判所に相続放棄の申述をする場合、被相続人や相続人の戸籍謄本を添付資料として提出します。その戸籍謄本を取得できるのが市役所の窓口です。戸籍謄本や住民票は相続登記や銀行での相続手続などさまざまな手続きで求められるため、場合によっては何度も市役所を訪れることになるかもしれません。

 

相続相談

市役所では相続相談など無料の法律相談も行っています。相談の内容によって日時が指定されていることもありますが、実際に市内の専門家が相談に乗ってくれるため安心して利用できます。

また一般向けの法律講座を開催していることもあるため、市報や市役所のWEBサイトなどをこまめにチェックしておくと良いでしょう。

 

市役所で相続放棄の相談をするには

市役所ではさまざまな法律相談を受け付けています。もちろん相続関連の相談にも対応していますし、その中には相続放棄に関するものも含まれます。ちなみに相談に対応するのは市役所の職員ではなく、市内で実際に開業している弁護士などの専門家です。

ここでは市役所の相続相談(法律相談)を利用する手順や、市役所で相続の相談をするメリット・デメリットについて説明していきます。

 

相続相談の利用方法

ステップ①:利用条件の確認

相続相談の利用方法は市区町村ごとに決められています。原則として市民なら誰でも利用できますが、「在勤・在学者」については対応が別れているようです。

参考までに、横浜市の利用条件を紹介します。

  • 横浜市民(在勤・在学は不可)が対象。
  • 契約書や答弁書、遺言書等の書類の作成、内容のチェックなどは行いません。口頭で相談したい内容をご説明ください。
  • 担当した専門相談員に直接問題の解決や具体的な仕事を依頼することはできません。
  • 弁護士職務規定や司法書士倫理に定める規定に抵触する場合など内容によっては相談をお断りする場合があります。
  • 各専門相談員の職務、業務等が法律で定められている場合は、その範囲内での相談となります。(弁護士と司法書士は相続税・贈与税等の税金の話は分かりません。税金の相談は税理士か税務署にお願いします。市民相談室では税理士の相談は行っていません。)
  • ご相談の案件によっては、専門相談よりも所管部署をご案内する場合があります。
  • ご相談の内容等、後日のお問い合わせにはお答えできません。
  • 不正な利用が判明した場合には、相談の予約を取り消します。
  • 手話通訳が必要な方…市民相談室で予約をしたあと、横浜ラポール(外部サイト)で通訳の依頼をしてください。
  • 外国語通訳が必要な方…横浜市国際交流協会(YOKE)へ電話で申し込みをしてください

横浜市『市民相談室 (市庁舎3階)』より

 

ステップ②:相談日時の確認

市役所ではさまざまな法律相談を実施しています。ほとんどのケースでは相談内容ごとに曜日や時間を決めているため、まずは相続相談をしている日時を確認しましょう。

横浜市の場合、相続に関係する相談会は以下の日時で行っています。

種別 実施日時 相談時間 内容 相談員
法律相談 月~木
午前:電話のみ
午後:対面のみ
金曜日
午前・午後:対面のみ
月~金曜日
9:00~12:00
13:00~16:00
25分以内 法律問題全般 弁護士※専門分野は選べません
夜間法律相談 電話のみ
毎月第2・4水曜日
18:00~20:30
25分以内 法律問題全般 弁護士※専門分野は選べません
司法書士相談 対面のみ
月~水曜日
13:00~16:00
25分以内 相続・不動産登記、成年後見、債務整理(140万以下)等 認定司法書士
公証相談 電話のみ
毎月第1・3金曜日
13:00~15:00
25分以内 遺言・任意後見契約・
賃貸契約などの公正証書
 公証人

横浜市『市民相談室 (市庁舎3階)』より

 

ステップ③:予約をする

市役所にもよりますが、相続相談などの法律相談は予約制になっているところが多いようです。確実に相談をするためにも予約をしておきましょう。

 

ステップ④:相談のポイントを確認する

市役所の相談は短時間で行われます。時間を有効に使うため(必要なことを聞き漏らさないため)にも、相談に行く前にポイントを整理しておきましょう。

 

利用のメリット

メリット①:無料

市役所の相続相談を利用するメリットのひとつは「無料である」ことです。法律事務所などで相談する場合は一定の相談料が発生することが多いため、特に初めて相続の相談をするという人には市役所の無料相談がおすすめです。

 

メリット②:地元の専門家と出会える

市役所の無料相談を担当するのは地元で活躍する地域密着型の専門家です。普段は自分の弁護士事務所や司法書士事務所などで相談を受けていますが、そうした事務所を「敷居が高い」と感じている人にとって、専門家と直接出会える市役所の相続相談は貴重な機械となるでしょう。

 

利用のデメリット

デメリット①:時間が短い/回数制限がある

市役所の相続相談でデメリットといえるのが、一回あたりの相談時間の短さです。ほとんどの市役所で20分〜30分程度(横浜市は25分)となっています。また一つの案件につき「1回限り」とか「2回まで」といった制限が設けられていて、深い内容の相談、込み入った相談はあまりできません。

 

デメリット②:その場で仕事を依頼できない

通常の法律事務所などでは相談から仕事の依頼まで行えますが、市役所の相続相談はあくまで「相談のみ」です。相続放棄のサポートを依頼したい場合は、後日あらためて法律事務所などを訪れる必要があります。

 

まとめ

市役所の相続相談は気軽に利用できます。時間制限などの関係で細かな相談には向いていませんが、まずは本格的な相談に向けた前準備として活用してみるのはいかがでしょうか。その際はぜひこの記事を参考にしてみてください。

ご相談やご依頼がございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。

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