遺産相続で勝手に手続きするとどうなる?トラブルへの対策方法についても解説

相続手続には手間も時間もかかります。このため複数の相続人がいる場合、全員で都合を合わせるよりも「勝手に手続き」してしまうほうが手っ取り早いと感じてしまうこともあるかもしれません。この記事では遺産相続で勝手に手続きをするとどうなってしまうのか、具体的に解説していきます。

 

遺産相続で勝手に手続きをするのはNG

遺産相続の手続きは、相続人の数が増えるほど大変になります。揃える書類(戸籍謄本など)が増えるのはもちろん、遺産分割について話し合うために連絡をとったり、全員の予定を合わせるだけでも一苦労でしょう。とはいえたとえ手間を省くためであっても、一部の相続人だけで勝手に手続きを進めるのはNGです。

関連記事『遺産を独り占めするとバチがあたる?予想されるトラブルと対処方法を解説

 

勝手に遺産分割協議をする

勝手な遺産相続手続には、たとえば「勝手に遺産分割協議をする」ことが含まれます。その中には共同相続人が遠方に住んでいたり仕事で多忙だったりする場合などに、良かれと思って勝手に遺産分割を行うこともあれば、共同相続人と疎遠になっていて声をかけづらく、やはり勝手に遺産分割を行うケースもあるでしょう。中には遺産を独り占めしようとして、他の相続人に声をかけないまま遺産分割を行う人もいます。

どのような意図でやったにしても、勝手な遺産分割協議は「相続人全員の同意が必要」というルールに違反していますし、そもそも無効です。

 

勝手に相続人を決める

同様に、勝手に相続人を決めることも認められません。相続人は「遺言書」の指定によって決められるか、遺言書がない場合は法定相続人のうち相続順位の高い人が自動的に相続人になります。

相続人(被相続人との関係) 相続順位
配偶者 常に相続人
子(亡くなっている場合は孫などの直系卑属) 第1位
直系尊属(父母、祖父母など) 第2位
兄弟姉妹(亡くなっている場合はその子) 第3位


この相続順位は法律(民法)によって決められているため、一部の相続人が勝手に変えることはできません。もちろん、法定相続人ではない人が勝手に相続人になったり、相続順位の低い人が上位の人を飛び越えて相続人になることも不可能です。

 

勝手に財産を処分する

しばしば発生する深刻なトラブルが、被相続人と同居していた親族による財産の処分です。たとえば親と同居していた子供が他の共同相続人を差し置いて勝手に自宅を相続登記したり、亡くなった親の通帳と印鑑で預金を引き出したり、美術品などを勝手に売り払ったり、といったケースが考えられます。

こうした行為は、遺産分割協議後に(その遺産を相続した人が)行うべきものです。もし遺産分割協議をしないまま財産の処分を行うと、相続人同士の深刻な対立を招くことになります。また財産を処分した本人も「単純承認」をしたとみなされ、それ以降は相続放棄や限定承認の手続きができなくなるため注意が必要です。

関連記事『相続を単純承認するとはどういう意味?成立要件と注意点について解説

 

勝手に遺言書を開封する

勝手な遺産相続手続きの中でも、特に危険なのが遺言書の扱いです。たとえば自宅保管されていた自筆証書遺言を勝手に開封してしまうと処罰(5万円以下の過料)される可能性もあります。

ちなみに遺言書の扱いが厳しく定められているのは、偽造や変造などを防止するためです。自筆証書遺言を発見した場合、未開封のまま家庭裁判所の検認※を受けるようにしてください。

※相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続(裁判所WEBサイト『遺言書の検認 | 裁判所』より)

 

勝手な遺産相続手続のリスク

遺産相続手続を勝手に行うことで発生するリスクやデメリットにはさまざまなものがあります。

 

遺産分割協議でのトラブル

勝手に遺産相続手続をされた場合、他の相続人とのトラブルが予想されます。たとえば直接顔を合わせる遺産分割協議の場で対立が発生し、まともな話し合いができないというケースもあるでしょう。冷静な話し合いができなければ、その後「裁判」に発展してしまう可能性もあります。

 

遺産分割調停・遺産分割審判

遺産分割協議を行えなかったり、協議の場で話し合いがつかない場合、話し合いの場が家庭裁判所に移されることもあります。これは「遺産分割調停」のことです。

遺産分割調停とは、裁判所が選ぶ調停委員(専門知識を持った第三者)が当事者の間に入って、中立的な立場から話し合いを進める手続きです。相続の経験豊富な第三者からアドバイスや提案をもらうことにより、直接話し合うよりも冷静に、合理的な判断を下せる可能性がありますが、少なくともどちらか一方にだけ有利な遺産配分になることはありません。

遺産分割調停でも話し合いがつかない場合、裁判官が遺産分割の内容を判断する「遺産分割審判」に移行します。

関連記事『遺産分割調停の内容と活用方法とは?審判・訴訟との違いについても解説

 

遺産分割協議無効確認訴訟

遺産分割協議を勝手に行っていた場合、「遺産分割協議無効確認訴訟」を起こされる可能性があります。これは文字通り遺産分割協議が「無効」であることを裁判所に認めてもらう訴訟です。もしも正当(合法的)な理由もないまま他の相続人を参加させずに遺産分割協議をしたのなら、裁判で敗訴する可能性は高いでしょう。

 

遺産分割協議不存在確認訴訟

同じく、遺産分割協議書を勝手に作成した場合も訴訟対象になります。この場合の訴訟は「遺産分割協議不存在確認訴訟」です。

 

遺留分侵害額請求

勝手な相続手続によって遺産を独り占めしてしまった場合、他の相続人から「遺留分侵害額請求」を受ける可能性があります。異溜分とは「法定相続人が最低限受けることができる相続分」のことで、請求を受けた側は相手の遺留分に相当する金銭を支払わなければなりません。

遺留分侵害額請求は口頭や書面で行われることもありますが、家庭裁判所に申し立てられることもあります。

関連記事『遺留分侵害請求権とはどのような権利?請求方法や請求を受けた場合の対応について

 

不当利得返還請求・損害賠償請求

被相続人の預金口座から勝手に引き出したり、遺産の一部または全部を売り払ってしまった場合には、他の相続人から「不当利得返還請求訴訟」を起こされる可能性があります。この訴訟に敗訴した場合は金銭を返還しなくてはなりません。もし返還できるお金が残っていなければ、他の財産を差し押さえられる可能性もあります。

また、財産の使い込みや処分によって他の相続人に損害を与えてしまった場合、やはり「不法行為にもとづく損害賠償請求」の訴訟を起こされる可能性が高くなるでしょう。

関連記事『親の通帳からの使い込みは罪になる?相続トラブル時の対処方法についても解説

 

抹消登記手続請求

相続財産に含まれる不動産を勝手に登記していた場合、「抹消登記手続請求」の訴訟対象になります。抹消登記手続請求とは無効な登記の抹消を要求する手続きです。

ただし勝手に相続登記をした人が「さらに別の人(第三者)に不動産を売却」して「第三者が登記を完了」していた場合、その第三者に対しては抹消登記手続請求をできない可能性もあります。

 

代償金の請求

勝手な相続登記を他の相続人が追認する代わり、それぞれの法定相続分に相当する金銭(代償金)を要求されることもあります。双方が納得すれば特に問題ありませんが、代償金の支払いそのものや代償金の金額をめぐって意見が対立した場合は家庭裁判所の遺産分割審判に発展する可能性もあるため注意が必要です。

 

勝手に手続きをする前に相続の専門家へ相談を

勝手に相続手続は、すべての関係者にとってトラブルや混乱の元になります。動機がどのようなものであれ、勝手に手続きをする前に、まずは専門家に相談するようにしてください。

相続の専門家にはさまざまな種類がありますが、現時点で相続人同士のトラブルが発生しているなら弁護士に、そうでないなら行政書士や司法書士に相談するのがお勧めです。

関連記事『遺産相続は誰に頼むのがベター?各専門家の業務範囲や費用・注意点についても解説

 

まとめ

遺産相続の手続きは、必ず相続人全員で行うようにしましょう。もし遠方の相続人がいたり、仕事でそれぞれの都合を合わせにくいなどの事情があるなら、行政書士、司法書士、弁護士などの専門家に相談してみてください。専門家を上手に活用することが相続を争族にしないためのコツです。

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