相続を勝手に進められたらどうする?他の相続人から財産を取り戻す方法とは


相続にまつわるトラブルの中には「他の相続人に勝手に相続手続を進められた」というものがあります。このような場合、被害を受けた相続人はどのような手段で対抗すればよいのでしょうか?この記事では相続を勝手に進められてしまうトラブルのパターンと、その対処法について説明します。

 

相続を勝手に進められたケース

自分が気付かないうちに、勝手に相続手続を進められていた…。
このような話を耳にしたり、実際に相談を受けることがあります。しかし「相続を勝手に進める」といっても、具体的な内容はさまざまです。

ここではまず、よくあるトラブルのパターンをご紹介しましょう。

 

相続分を勝手に決められる

相続人が複数いる場合、どの相続人がどの財産(もしくは、どれくらいの財産)を相続するかは遺言書による指定か遺産分割協議で決められます。特に後者の場合、協議は相続人全員が参加し、全員の合意で決めなくてはなりません。

ところが一部の相続人が勝手に相続分を決めてしまうことがあります。ひどい場合には特定の相続人が、他の同意もなしに財産を独り占めしてしまうケースもあるのです。このような遺産分割協議はもちろん無効ですが、現実には強引に押し切られてしまうことも皆無ではありません。

関連記事『遺産を独り占めするとバチがあたる?予想されるトラブルと対処方法を解説

 

財産の使い込みをされる

形だけの遺産分割協議と同じくらい悪質なのが、財産の使い込みです。たとえば被相続人と一緒に暮らしていた相続人が、被相続人の通帳と印鑑を使って預金を勝手に引き出すケースが考えられます。

もちろん被相続人の預金も相続財産の一部ですから、本来なら遺産分割協議が完了するまで誰も手を付けてはいけないのですが、実際にはそういうトラブルも少なくないのです。

関連記事『親の通帳からの使い込みは罪になる?相続トラブル時の対処方法についても解説』

 

不動産を勝手に登記される

被相続人が持っていた不動産の名義を、勝手に書き換えられてしまうというケースもあります。たとえば被相続人と同居していた相続人が自宅の土地や建物の名義を書き換えてしまうといったパターンがありがちです。

 

相続を勝手に進められた場合の対処法

上記のようなトラブルが発生した場合、被害を受けた相続人はさまざまな手段で自分の権利を守らなくてはなりません。

 

相続人全員で話し合う

最も基本的な対策は「話し合い」です。具体的には、本来のルールに従ってきちんと「遺産分割協議」を行います。そもそも複数の共同相続人がいる場合、そのうちの一人が欠けただけでも遺産分割協議は成立しませんし、そのような場で作られた遺産分割協議書は無効です。

まずは相続人全員が冷静になって話し合い、妥協点や協力できる点を探すのがお互いのためといえるでしょう。

 

遺産分割調停

どうしても相続人同士の話し合いがまとまらない場合や、一部の共同相続人が協議に協力してくれない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。

遺産分割調停とは裁判所が選んだ調停委員(専門知識を持った第三者)が当事者の間に入り、話し合いを進める手続きです。相続の経験豊富な第三者からアドバイスや提案をもらうことで、直接話し合うよりも冷静に、合理的な判断を下せる可能性があります。

なお遺産分割調停が決裂した場合、裁判官が分割内容を判断する「遺産分割審判」に移行します。

関連記事『遺産分割調停の内容と活用方法とは?審判・訴訟との違いについても解説

 

遺産分割協議無効確認訴訟

一部の相続人が欠けたまま遺産分割協議が進められた場合、その無効を主張するには「遺産分割協議無効確認訴訟」が必要です。他にも認知症で判断能力がなくなった相続人を「あえて」参加させて行われた協議や、他の相続人を騙したり財産の一部を隠したりして行われた遺産分割協議についても、この訴訟によって無効を主張できます。

なお遺産分割協議書が偽造された場合は遺産分割協議無効確認訴訟ではなく、「遺産分割協議不存在確認訴訟」を起こします。

 

遺留分侵害額請求

相続財産を独り占めされたり、自分の相続分がゼロ(もしくは非常に少ない額)にされた場合は、「遺留分侵害額請求」で対抗することもできます。

遺留分とは法定相続人が「最低限受け取ることができる相続分」のことです。この権利は遺言書によっても変えたり奪われたりすることがありません。遺留分を侵害された相続人は、実際に財産を受け取った人に対して遺留分に相当する金銭の支払いを要求できます。

関連記事『遺留分侵害請求権とはどのような権利?請求方法や請求を受けた場合の対応について

 

相続回復請求

もし相続人ではない人に相続財産を奪われてしまった場合は「相続回復請求」を行えます。ここでいう「相続人ではない人」とは、一見すると相続人のように見える人、たとえば「廃除」や「相続欠格」によって相続権を失った元相続人(表見相続人)のことです。

このような人が財産を専有している場合、本来の相続人(真正相続人)は相続回復請求により権利の回復を要求できます。

関連記事『相続回復請求権とはどんな権利?時効や請求の方法についても解説

 

銀行口座の凍結・取引履歴の確認

預金の使い込みを未然に防ぐには「口座の凍結」が必要です。基本的に、銀行などの金融機関は口座名義人の死亡を確認した時点で口座を凍結しますので、相続が発生したらできるだけ早いタイミングでそのことを連絡するようにしましょう。

すでに使い込みが疑われる場合は、使い込まれた金額を正確に把握するために「取引履歴の確認」が必要です。この場合、銀行に申請すれば指定した期間の取引履歴を発行してもらえます。

 

不当利得返還請求・損害賠償請求

財産の使い込みが発覚した場合は「口頭(話し合い)」で返還を請求することもできますが、相手が返還に応じなければ裁判も可能です。この場合は「不当利得返還請求」や「不法行為にもとづく損害賠償請求」を申し立てることになります。

関連記事『親の通帳からの使い込みは罪になる?相続トラブル時の対処方法についても解説

 

代償金の請求

不動産を勝手に登記されてしまった場合、名義を元に戻す代わりに相続分に相当する金銭(代償金)の支払いを受けることもできます。この場合も基本的には当事者同士の話し合いで決めますが、相手がどうしても同意しない場合やそもそも話し合いに応じない場合、家庭裁判所に「遺産分割審判」を申し立てることも可能です。

 

まとめ

相続を勝手に進められた場合でも泣き寝入りする必要はありません。今回紹介した手段を上手に使うことで「正当な権利」を取り戻すことができます。ただしトラブルの解決には時間も手間も(そして根気も)かかるため、できるだけ弁護士などの専門家に相談して、スムーズな解決を目指すようにしましょう。

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