日本で最も店舗数の多い銀行は「ゆうちょ銀行」です。多くの方がゆうちょ銀行に口座を持っているため、その分、相続発生時にゆうちょ銀行で手続きをする機会も多いといえるでしょう。この記事ではゆうちょ銀行の相続手続について解説します。
ゆうちょ銀行の相続手続
ゆうちょ銀行の相続手続には、いくつかの部分で他の金融機関と異なる特徴があります。
特徴(メリット・デメリット)
①どの支店でも手続可能
ゆうちょ銀行は、どの支店で口座を開いたかに関わらず、全国すべての支店で相続手続を受け付けてくれます。たとえ転居を繰り返している場合でも、最寄りの支店で手続きできるのがメリットです。
②書類提出は必ず窓口で行う
これはデメリットといえますが、ゆうちょ銀行の手続きでは必要書類を必ず窓口で行う必要があります(郵送による提出はできません)。このため他の金融機関での手続きと比べ、時間や手間といった負担が多少高めとなります。
③払戻先はゆうちょ銀行の口座のみ
故人の口座を解約して払い戻しを受ける場合、払戻先として指定できるのはゆうちょ銀行の口座のみです。もし相続人がゆうちょ銀行の口座を持っていないなら新規に口座開設しなければなりません。なお口座への入金ではなく、「払戻証書」で払い戻しを受けることもできます。
注意点
ゆうちょ銀行で相続手続を行うためには、口座の「記号番号」が必要です。記号番号とはゆうちょ銀行口座の入出金やゆうちょ銀行口座同士の送金に使われるもので、他の金融機関からの振込時に利用される口座番号とは違います。なお記号番号は通帳やキャッシュカードに記載されています。
ゆうちょ銀行の相続手続の流れ
ゆうちょ銀行の相続手続は「口座の名義変更」と「口座の解約(通帳の解約)」の2種類です。どちらを選ぶかは自由ですが、いずれの場合も以下の流れで手続を進めていきます。
①「相続確認表」を提出
まずはゆうちょ銀行の窓口に行かなくてはなりません。そこで「相続確認表」を提出すると相続手続が開始されます。
なお相続確認表はゆうちょ銀行の窓口にも用意されていますが、できるだけ事前に入手・記入しておくと良いでしょう。相続確認表は以下のリンク先からダウンロードできます。
ゆうちょ銀行WEBサイト:相続確認表
ゆうちょ銀行WEBサイト:相続確認表の記載例
もし「口座を持っていることは知っているけど記号番号がわからない」「口座を持っているかどうかがわからない」という場合は、「貯金等照会書」を提出して確認します。
ゆうちょ銀行WEBサイト:貯金等照会書
ゆうちょ銀行WEBサイト:貯金等照会書の記載例
②「必要書類のご案内」の受け取り
①の手続きから1〜2週間ほどすると、ゆうちょ銀行から「必要書類のご案内」が郵送されてきます。必要書類のご案内には今後の手続きで必要になる書類が記載されているため、それを参考に書類を準備していきます。
なお必要書類は「相続Web案内サービス」でも確認可能です。
③必要書類の提出
必要書類がすべて揃ったら、あらためてゆうちょ銀行の窓口でそれを提出します。提出先は原則として①と同じ支店の窓口です。
④相続払戻金の受け取り
口座の解約と払い戻しを選択した場合、③の手続きから1〜2週間ほどで指定したゆうちょ銀行口座に払戻金が入金されます。もし希望すれば「払戻証書」を受け取り、それを窓口に提出して現金を受け取ることもできます。
相続Web案内サービスについて
ゆうちょ銀行の相続手続では「相続Web案内サービス」というWebサービスを利用できます。ただし相続Web案内サービスは必要書類を案内するためのもので、書類の提出などの手続をWeb経由で行うことはできません。
相続Web案内サービスを利用するための必要機器は以下の通りです(2022年6月時点)。
Windowsの場合 Mac OSの場合 その他 |
利用の流れ
相続Web案内サービスを利用した相続手続の流れは以下の通りです。
①必要情報の入力
「相続手続きナビゲーション」に従って相続の状況(遺言書の有無など)や家族関係図(遺言書がある場合は不要)を入力し、手続きを行うゆうちょ銀行窓口のある都道府県を指定します。その後、入力内容に応じて手続きに必要な書類が案内されます。なお入力から回答までの時間は15~45分程度です。
②必要書類の収集
相続Web案内サービスの回答で指示された通りに書類を集めます(相続の状況によっては、後から追加書類の提出を求められることもあります)。
③必要書類の提出
相続手続に必要な書類がすべて揃ったら、ゆうちょ銀行の窓口でそれらを提出します。書類の中には発行後の有効期限が設定されているものもあるため(たとえば印鑑証明書)、書類収集と書類提出のタイミングには注意が必要です。
必要な書類について
ゆうちょ銀行の相続手続に必要な書類は、相続の状況によって変わります。具体的には「必要書類のご案内」や「相続Web案内サービス」で案内されますが、多くの人に共通する基本的な書類は次のようなものです。
必要書類の例
- 被相続人の全ての戸籍謄本
- 被相続人の戸籍の附票
- 相続人の現在の戸籍謄本(被相続人死亡後のもの)
- 中間の戸籍謄本(代襲相続の場合)
- 相続関係説明図
- 遺産分割協議書
- 全相続人の印鑑証明書(6ヶ月以内のもの)
- 全相続人の署名押印済の相続手続請求書
- 貯金通帳、キャッシュカード
なお上に挙げたものはあくまで「例」です。実際に書類を準備する際は、必ず「必要書類のご案内」や「相続Web案内サービス」を確認するようにしてください。
ゆうちょ銀行の残高証明書
被相続人がゆうちょ銀行に口座を持っていたら、まずはその内容(預けてある金額)を正確に把握する必要があります。そのために必要なのが「残高証明書」です。
残高証明書を手に入れるには、まず郵便局の窓口で申請をします(郵送による手続きは不可)。申請できるのは相続人と相続人の代理人です。
ちなみに残高証明書は窓口で即時交付してもらえるものではありません。残高証明請求書と必要書類の提出後、およそ10日〜2週間程度で請求者の自宅に郵送されます。必要書類は以下の通りです。
- 被相続人の死亡の事実が確認できる戸籍謄本等
- 相続人であることが確認できる戸籍謄本等
- 相続人の身分証明書(運転免許証など)
- 相続人の印鑑
残高証明書の発行手数料は証明書1通につき1,100円です。
関連記事『ゆうちょ銀行の残高証明書を請求するには?相続手続の流れについても説明』
手続を専門家に任せるメリット
ゆうちょ銀行の相続手続は原則として相続人や遺言執行者が行いますが、行政書士などの専門家に依頼して任せることも可能です。専門家に依頼する主なメリットは次の通りです。
- 時間の節約になる
- ミスのない手続きをしてもらえる
- 相続に関する相談ができる
ゆうちょ銀行は他の金融機関と比べて多めに窓口に足を運ぶ必要があるため、特に手間がかかります。ストレスなく手続きを進めたい方は、できるだけ専門家を利用した方が良いでしょう。
なお専門家にはいろいろな種類があるため、『遺産相続は誰に頼むのがベター?各専門家の業務範囲や費用・注意点についても解説』を参考にして、最もニーズを満たしてくれる専門家を選んでください。
まとめ
ゆうちょ銀行は郵便局があるところならどこにでも窓口があるため、口座を持っている人は大勢います。他の金融機関よりも「手続をする可能性が高い」ため、この記事やゆうちょ銀行のWebサイト(相続手続き-ゆうちょ銀行)を参考にして、スムーズな手続を目指すようにしましょう。
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