ネット証券の利用者が死亡した場合の相続手続とは?財産調査の方法や注意点を解説

相続財産の中には株式などの有価証券が含まれることがあります。最近ではこれらの株式をインターネット専門の「ネット証券」で取引するケースも少なくありません。この記事ではネット証券の利用者が亡くなった場合の相続の流れと注意点について説明します。

 

ネット証券と相続の関係

上場会社の株式や投資信託といった金融商品は証券会社経由で取引されます。このため被相続人の財産に株式が含まれる場合、まずは証券会社に問い合わせて相続手続を行わなくてはなりません。従来、株式などの取引は証券会社の実店舗(建物)で行うのが一般的でしたが、近年はインターネット技術の発展により、「ネット証券」での取引も増えています。

 

ネット証券とは

ネット証券は従来の証券会社と違い、顧客対応用の店舗を持たない証券会社です。いわゆる実店舗を持たないため、株式などの金融商品の取引、そして相続などの手続はインターネット上で行われます。

主な(有名な)ネット証券は以下のような会社があります。

  • SBI証券
  • 楽天証券
  • 松井証券
  • マネックス証券
  • LINE証券
  • SBIネオトレード証券
  • SBIネオモバイル証券
  • DMM.com証券
  • 岡三オンライン
  • auカブコム証券
  • GMOクリック証券

また野村證券やSMBC日興証券のように、従来の証券会社の中にもネット証券に乗り出す会社が増えています。比較的最近になって登場したネット証券ですが、すでに若い世代を中心に広く利用されており、今後の「主流」になっていくと考えられます。

 

ネット証券の株式を相続するには

被相続人の証券口座にある株式などは、いったん換金した上で遺産分割するか、そのまま(銘柄のまま)相続人に分配します。

ただし株式を換金(売買)するには名義人本人の指示が必要になるため、まずは相続人名義の口座から相続人の口座に株式を移さなくてはなりません。ちなみに証券会社によっては他社の証券口座への移管ができないことがあります。そのような場合、もし被相続人と同じネット証券に相続人の口座がないなら新たに口座を開設します。

 

ネット証券の利用者が死亡した場合

ネット証券を利用していた方が亡くなった場合、銀行口座の場合と同様に相続手続が必要です。ネット証券ならではのトラブルもあるため、十分に注意してください。

 

よくあるトラブル

ネット証券の相続でよくあるトラブルは、大きく分けて2つです。

①口座の存在がわかりにくい
パソコンやスマホで完結してしまうネット証券は、家族にも存在を知られないまま運用されていることがあります。このため被相続人が死亡すると「口座があること」自体に気付かれないまま相続手続が進んでしまうことも少なくありません。
また家族が「ネット証券の口座を持っている」ことを知っていても、ログイン方法や相続手続に関する連絡方法まではわからない(操作できない)こともあります。

②相続手続に時間がかかる
すべての手続をインターネットと郵送で行うネット証券は、担当者と対面で手続きができる一般的な証券会社と比べて相続手続に時間がかかります。また戸籍謄本や印鑑証明書などを提出する際も、店頭での手続なら確認後に原本を返却してもらえますが、郵送で提出するネット証券の場合はそれも難しいことが多いです。

 

財産調査の方法

遺産の中にネット証券の口座があるか、またどのネット証券会社に口座を持っているかは、いくつかの方法で確認できます。

  • 本人宛の郵便物を調べる
    証券会社は定期的に「取引報告書」や「取引残高報告書」などを発行します。これらは郵送で送られることがあるため、被相続人宛の郵便物を調べることで、口座の存在と取引内容について把握できるかもしれません。ただし本人が報告書の電子交付(インターネット上で閲覧)を選んでいた場合、この方法は利用できません。

 

  • 確定申告書類を調べる
    株式の運用で一定の利益(年間20万円以上)が出ていた場合は確定申告が必要です。このため確定申告の控え書類を調べることで、証券会社名や取引内容がわかる可能性があります。ただしネット証券を使う人は確定申告もオンラインで行っている可能性が高く、「紙」の控え書類が残っている可能性は少ないでしょう。

 

  • 本人のパソコンやスマホを調べる
    被相続人が使っていたパソコンの中にネット証券に関連するファイルやデータ、確定申告書類の控えが残されていることがあります。特にブラウザにはネット証券の口座にアクセスできるブックマークが登録されている可能性がありますし、ブラウザの閲覧記録からそれがわかることもあります。スマホやタブレットの場合、ネット証券関係のアプリがあるかどうかを確認すると良いでしょう。

 

  • 本人の銀行口座を調べる
    銀行口座の通帳に記録されている取引履歴、あるいは銀行が発行する取引明細書の中に、ネット証券会社との取引記録があるかもしれません。

 

  • ほふり(証券保管振替機構)に照会する
    ほふりとは、上場企業の株式・社債などを管理する期間です。ここに問い合わせることで被相続人が取引していたネット証券(を含むすべての証券会社)が判明します。ただし手続には手間がかかるうえ、1件あたり6,050円の開示費用がかかるため注意が必要です。

参考リンク:『ご本人又は亡くなった方の株式等に係る口座の開設先を確認したい場合|証券保管振替機構

 

  • 専門家に依頼する
    行政書士などの専門家に相談して、ネット証券を含む相続財産調査を行ってもらうこともできます。一括して任せてしまえるため時間と手間を節約するには最適な方法といえるでしょう。ただし専門家に支払う報酬が発生します。

関連記事:『相続発生後の財産調査はどうすればいい?財産ごとの調査手順について解説

 

ネット証券の相続手続について

ネット証券の口座が判明したら、相続手続に進みます。ただし手続の流れや必要書類は銀行での相続手続と大きく変わりません。

関連記事:『銀行預金の相続手続に期限はある?手続きの手順や注意点について解説』

 

手続に必要な書類

必要書類はネット証券ごとに多少異なります(詳しくはそれぞれの会社に問い合わせたり、WEBサイトなどで確認することをお勧めします)。一般的に必要とされる書類は、以下のものです。

  • 被相続人と法廷総則人の戸籍謄本(除籍謄本)
  • 法定相続人の印鑑証明書
  • 遺言書と検認調書(遺言書がある場合)
  • 遺産分割協議書(遺産分割協議を行った場合)
  • 調停調書(家庭裁判所の調停を利用した場合)
  • 審判書(家庭裁判所の審判を受けた場合)

相続の状況によっては、その他の書類も必要になります。書類の中には発行からの有効期限が定められているものもあるため注意してください。

 

相続手続の流れ

ネット証券の相続手続の流れは次の通りです。

①電話やWEBから連絡する
②相続手続に必要な書類が案内される
③遺産分割協議で相続方法などを決める(遺言書で相続の指定がない場合)
④相続人が証券会社に口座を開設する(持っていない場合)
⑤株式の移管手続を受ける
⑥必要に応じて売却(現金化)する

ネット証券会社とのやりとりは電話やインターネット経由が基本になるため、誤解や説明の聞き漏らしがないよう注意しましょう。

 

遺産分割のポイントと注意点

株式の価値(株価)は常に変動しています。相続発生時と相続手続が完了したときとで株価が大きく変わっていることも少なくありません。このため遺産分割の際は相続人同士でよく話し合って、どのタイミングで株式を売却するのか、それぞれがいくらもらうのかなどを確認しておくことが大切です。

また株式を銘柄のまま分割する場合、いったん分割手続をすると元に戻すことができない(分割のやり直しはできない)ため、慎重に遺産分割交渉を行う必要があります。

 

まとめ

さまざまな相続財産の中で、特にネット証券は「存在に気づきにくい」ものです。相続が発生したら徹底的に財産調査をして、遺産に漏れがないようにしましょう。もしネット証券の口座が見つかったら、ぜひこの記事を参考に手続を進めてみてください。

 

 

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