孤独死は相続手続に影響する?手続きの流れから注意点までまるごと解説

時折、孤独死のニュースを目にすることがあります。少子高齢化や核家族化が進む日本では、一人暮らしの老人や身寄りのない方が亡くなった後に発見されるケースは少なくありません。この記事では孤独死をした方の相続手続について解説していきます。

 

孤独死と一般的な死亡の違い

一人暮らしの方が孤独死した場合でも、子や兄弟が健在なら相続が発生します。しかし孤独死から始まる相続手続は、一般的な死亡より相続人の負担が大きくなってしまうことがほとんどです。

中でも特に大変なのが、遺体の取り扱いと後片付けでしょう。亡くなってから発見までに時間がかかると遺体は腐敗し、結果として異臭の発生や建物への悪影響が発生します。もし建物が持ち家なら売却価格が下がり、賃貸物件なら「事故物件」扱いになって借り手がつかなくなるケースも少なくありません。

また孤独死をした方は家族と疎遠になっていることが多いため、相続人や親族と連絡がつきにくいケースも見られます。一般には孤独死が発見されると警察や役所などから家族・親族に連絡が行きますが、どうしても連絡がとれない(連絡先が不明)な場合、住んでいたアパートの家主や土地の管理人などが死亡届などの手続きをすることもあります。

 

孤独死が判明した場合の相続手続

いずれにしても、相続人が存在するのであれば相続手続はきちんと進めていく必要があります。手続きを行うのは原則として孤独死した方の相続人、たとえば子供や兄弟などです。

なお通常の遺産相続手続については『遺産相続は何から始める?相続手続の注意点も解説』もご覧ください。

 

死亡確認〜葬儀

死亡の連絡を受けたら、遺体の確認と葬儀の手配が必要です。特に死亡届は「亡くなった事実を知った日から7日以内」に提出しなければなりません。届出先は亡くなった方の本籍地か死亡地、届出人の住所地の市役所町村役場です。

 

特殊清掃の手配〜遺品の確認

孤独死の方が見つかった状況にもよりますが、大抵の場合は発見の時点ですでに遺体が腐敗していて、建物の内外に異臭が発生していたり、部屋の床が傷んでしまっていたりします。また所持品やゴミなどが部屋中に散乱していて、足の踏み場もないというケースも少なくありません。

こうした状況であれば、特殊清掃の手配が必要です。特殊清掃とは孤独死で傷んだ建物を原状回復したり、消毒や消臭などを専門に行う清掃業務で、業者によっては遺体の処置や納棺〜火葬までまるごと引き受けてくれることもあります。

また特殊清掃に加えて、遺品整理も業者に依頼した方がよいでしょう。部屋がゴミ屋敷のようになっている場合は特に、突然事情を知らされた相続人が、孤独死のあった部屋で、ゴミの分別や遺品の確認を行うのは負担が大きすぎるからです。

なお遺品処理業者の中には、遺品の内容を詳しくチェックせずに目に付くものを機械的に処分していくところもあります。万一遺言書や各種証書類を処分されてしまうと取り返しがつかないため、遺品整理の実績豊富な優良業者に依頼することをお勧めします。

遺品を確認する際は、遺言書や銀行の通帳・キャッシュカード、不動産や動産の権利書、生命保険の通知、その他公共料金の支払い通知や領収書といった、故人の財産や契約関連のものを優先的に見つけるようにしましょう。

 

相続人調査〜財産調査

特殊清掃や火葬など緊急性の高い手続きを行ったら、通常の相続と同じ流れで手続きを行っていきます。具体的には相続人調査と財産調査です。

相続人調査は、まず亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍謄本(除籍謄本)を取り寄せて内容を確認します。亡くなった方相続人(配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹)の目星がついたら、次にそれらの人の戸籍謄本を取り寄せて内容をチェックし、相続人を確定させて相続関係説明図を作成します。

これと並行、もしくは相続人調査より急いで行うのが財産調査です。亡くなった方がどのような財産を持っていたのか、現金や預金はあるか、不動産を持っていたか、借金などのマイナス財産はないかなど、調べることは一つではありません。

特にマイナス財産が多い場合は相続放棄を検討することもありうるため、できるだけ早く財産の全貌を明らかにする必要があるでしょう。

財産調査は手始めに、部屋に残された各種書類や身分証明書、郵便物などを中心に行います。ある程度の情報が集まったら法務局で名寄せを行い、不動産の所有状況を調べるのも重要です。

特に注意が必要なのは「マイナス財産」の有無です。もしすべての遺産相続を単純承認してしまうと、借金や身元保証人なども引き継いでしまいます。孤独死をされる方はこうした負債を抱えている割合も比較的高いため、できれば他の財産よりも優先的にマイナス財産を調べることがお勧めです。

マイナス財産も部屋に残された証書や郵便物で把握できることがありますが、「株式会社シー・アイ・シー」「株式会社日本信用情報機構」「一般社団法人銀行協会」といった信用調査期間にも念のため照会を行ってください。

参考記事:『相続発生後の財産調査はどうすればいい?財産ごとの調査手順について解説

 

遺産分割協議〜遺産分配など

相続人と財産が確定したところで、遺産分割協議を行います(相続人が複数の場合)。それまでに相続を承認するか、相続放棄するかどうかを決めておかなくてはなりません。

遺産分割協議をしたら遺産分割協議書を作成し、預金の払戻しをはじめ、準確定申告、相続税の申告、相続登記、各種名義変更といった本格的な相続手続に入ります。

これらの手続きは膨大な数にのぼるため、場合によっては専門家への丸投げも検討すべきでしょう。

関連記事:『遺産相続はどこまで丸投げできる?依頼できる専門家や費用相場についても解説

 

孤独死が判明したら相続放棄も検討する

すでに説明した通り、孤独死した方は何らかの負債を抱えているケースが少なくありません。財産調査の過程でこうしたマイナス財産が見つかればよいですが、もし気がつかないまま相続を行ってしまうと、後から膨大な借金を背負ってしまうこともあり得ます。

特に気を付けなくてはならないのが、遺品整理です。単純なゴミ捨てなら問題ないのですが、財産の一部をうっかり処分するとその行為が「単純承認」とみなされ、その後は相続放棄できなくなってしまいます。

孤独死した方の状況からマイナス財産の存在が疑われる場合は、財産を確定する前、あるいは遺品処理を始める前に相続放棄をしてしまうのも一つの方法です。もちろん相続放棄をすればすべての財産を相続できなくなりますが、マイナス財産を背負うリスクと比べればマシでしょう。いずれにせよ、この判断は慎重に行う必要があります。

相続放棄ができる期限は民法915条第1項に書かれている通りです。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。


相続の開始は死亡の時点ですが、孤独死の場合は死亡の正確な日時がはっきりしないことも少なくありません。このため「自己のために相続の開始があったことを知った時」つまり警察や役所などから孤独死の連絡を受けた時から「3か月以内」に相続放棄の手続きを行います。なお電話で孤独死の連絡を受けた場合、電話の日時は必ずメモしておくようにしましょう。

 

身寄りのない人が孤独死した場合の相続

孤独死した方に身寄りがない場合、その財産はどうなるのでしょうか?

まず孤独死が発見された時点で相続人の存在・不存在が明らかでない場合、家庭裁判所は利害関係人(被相続人の債権者、特定遺贈を受けた者、特別縁故者など)や検察官の申し立てにより「相続財産管理人」を選任します。

相続財産管理人は文字通り相続財産の管理、相続債権者への弁済、相続人の捜索、特別縁故者への分与などを行います。その後、残った財産は「国庫」に入ります。

関連記事:『一人っ子の遺産相続は何に注意すればいい?税金対策についても解説
関連記事:『恋人の遺産相続は可能?財産を与える方法や想定されるトラブルについて解説

 

まとめ

孤独死の相続手続では、相続人に大きな負担がかかります。自分の親や兄弟が一人暮らしをしているという場合、こまめに連絡をとるなどして孤独死のリスクを減らすことが重要です。また一人暮らしをしている方はあらかじめ遺言書を用意するなどして、相続発生後の負担をできるだけ減らすように心がけるようお勧めします。

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