遺産を独り占めした人の末路とは?独り占めされた側の対処方法についても解説

「相続人の一人が遺産を独り占めしてしまう」トラブルが発生した場合、独り占めした相続人はその後どうなるのでしょうか。今回の記事では「遺産を独り占めした人」の立場から、行く末に待っている境遇について説明していきます。

 

遺産の独り占めは得か損か

遺産を独り占めする人にはさまざまなパターンがあります。無自覚のまま結果的に遺産を独占してしまう人もいれば意図的に独り占めをする人もいますし、独占の方法も「使い込み」だったり「勝手な遺産分割」だったり「勝手な相続登記」だったりという具合です。

いずれにしても他の相続人にとっては迷惑な話ですし、遺産を独り占めした相続人がそのまま得をすることを許したいとは思わないでしょう。では実際のところ、遺産を独り占めした人は最終的に得をするのでしょうか、それとも何らかのバチに当たって損をするのでしょうか。

 

窃盗罪・横領罪との関係

一般に、人の財産を奪う行為は「窃盗」です。また管理している他人の財産に手を付けると「横領」に当たります。このように考えると、遺産の独り占めは窃盗罪や横領罪になるのではないか?と思えそうです。もしそうなら、遺産を独占した人は刑事上の罪に問われて禁錮や懲役、罰金などの処罰を受ける可能性もあります。

しかし窃盗や横領にあたる行為が親族間で行われた場合、話はそう単純ではありません。刑法第244条にこのような規定があるためです。

  1. 配偶者、直系血族又は同居の親族との間で第235条の罪、第235条の2の罪又はこれらの罪の未遂罪を犯した者は、その刑を免除する。
  2. 前項に規定する親族以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。
  3. 前2項の規定は、親族でない共犯については、適用しない。


ちなみに第235条とは窃盗罪、第235条の2は不動産侵奪罪(他人の不動産を占有する罪)を指します。上の条文の通り、配偶者や直系血族(親や祖父母、子や孫)、そして同居する親族による窃盗は処罰されません。それ以外の親族との間の窃盗も、被害者が直接告訴しない限り警察は動かないことになっています。なおこの条文には直接書かれていませんが、横領の罪も同じ扱いです。

このことから、相続財産を独占した人に必ずしも窃盗罪や横領罪が成立するとは限らない(処罰されるとは限らない)ことがわかります。

だからといって、遺産の独り占めが結果として「得」になるわけではありません。むしろ身勝手な行動が原因で、残念な末路に進んでしまう可能性が高いのです。

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遺産を独り占めした人の末路

遺産を独り占めした人は他の相続人の反感を買うのが普通です。当然ながら親族間の関係は悪化し、それ以降の交渉が途絶えたり、絶縁状態になる可能性もあるでしょう。しかし遺産を独り占めした人の末路は、そのような「人間関係の悪化」だけにとどまりません。むしろ経済的な利益も奪われてしまう可能性が高いのです。

 

遺留分侵害額請求

たとえば相続財産を独り占めした相続人に対し、他の相続人が「遺留分侵害額請求」をする可能性があります。遺留分とは法定相続人が「最低限受け取ることができる相続分」のことで、この権利は遺言書によっても無効にできません。

遺留分侵害請求はまず(相続人同士が)直接行うのが基本ですが、仮に要求を無視したとしても裁判を起こされる可能性があります。もし裁判になれば、不当に遺産を独占した相続人に勝ち目はないでしょう。

関連記事『遺留分侵害請求権とはどのような権利?請求方法や請求を受けた場合の対応について

 

遺産分割調停・遺産分割審判

遺産分割協議を拒否して(もしくは遺産分割協議の要求を無視して)遺産を独占している場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」の申し立てをされる可能性があります。遺産分割調停とは裁判所が選んだ調停委員(専門知識を持った第三者)が当事者の間に入り、話し合いを進める手続きです。遺産分割調停が決裂した場合、裁判官が分割内容を判断する「遺産分割審判」に移行します。

遺産分割調停や遺産分割審判では、どちらか一方の相続人が極端に有利に扱われることはありません。とはいえ遺産を独占していた人からすれば手元の財産の半分近くか、それ以上を取り上げられる形になります。

関連記事『遺産分割調停の内容と活用方法とは?審判・訴訟との違いについても解説

 

遺産分割協議無効確認訴訟・遺産分割協議不存在確認訴訟

遺産を独り占めするために勝手な遺産分割を行った場合、他の相続人が「遺産分割協議無効確認訴訟」によって遺産分割の無効を主張するかもしれません。また遺産分割協議書を偽造した場合は、「遺産分割協議不存在確認訴訟」の対象となります。

いずれにしても不当に遺産を独占していた人が訴訟で勝つ可能性はほとんどないため、その後も遺産を独占したままというわけにはいかないでしょう。

 

不当利得返還請求訴訟・損害賠償請求訴訟

すでに遺産の一部を使い込んでいた場合は、「不当利得返還請求訴訟」で使い込んだ分の返還を迫られることになります。使い込みによって他の相続人に何らかの損害を与えてしまったなら、その分の「損害賠償請求訴訟」を起こされることでしょう。

ちなみに裁判に敗れた場合は訴訟費用の支払いも命じられます。結果として独り占めした遺産以上の金銭が失われる可能性も少なくありません。

 

まとめ

遺産を独り占めした人の末路は悲惨です。人間関係はもちろん、財産も失ってしまう可能性があります。相続手続では目先の利益に惑わされてしまうことがないよう、相続人同士でよく話し合うことが重要です。

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