”はまぎん”の愛称で親しまれる横浜銀行。地方銀行としては日本最大規模で、横浜市民はもちろん神奈川県内全域や東京の多摩地域にも多くの利用者を抱える金融機関です。今回は横浜銀行に口座を持つ方の相続手続について、詳しく解説していきます。
横浜銀行の相続手続
横浜銀行に口座を持つ人は、神奈川県内や多摩地域を中心に大勢います。こうした方の相続が発生した場合、相続人はどのような手順で手続きをすればよいのでしょうか?
最初にやるべきこと
まず横浜銀行の窓口に行く前に、どの支店にどのような口座を持っているのかを調べるために通帳やキャッシュカードの確認をします。
また横浜銀行に相続発生の連絡をすると「口座が凍結」さるため、定期的な引き落としや入金の予定があるかどうかも確認して、関係者(支払い先や入金先)に連絡をする必要もあるでしょう。
相続発生の連絡
口座の確認や関係者への連絡を済ませたら、横浜銀行の店舗(被相続人の取引店)の窓口を直接訪れるか、もしくは電話で「相続発生の連絡」をします。連絡する内容は、
- 名義人(被相続人)の口座番号
- 被相続人が亡くなった日
- 法定相続人の範囲
などです。その後、横浜銀行から「相続⼿続きのご案内」が送られてきます。
なお相続発生の連絡をすると被相続人の口座は凍結され、入金も引き出しもできなくなります。仮に亡くなった方の口座から家賃や電気代といった生活資金を支払っていた場合、先に支払い(引き落とし)を別の口座に移しておかないと生活に支障が出る恐れも出るため、連絡のタイミングには十分注意してください。
残高証明書の取得
遺産分割協議や相続税の申告をするには、口座残高を含むすべての相続財産を正確に把握しなければなりません。そのために必要なのが「残高証明書」です。
本来、残高証明書は口座の名義人が申請するものですが、名義人が亡くなっている場合は相続人の一人が単独で申請できます。また遺言執行者や相続財産管理人なども申請可能です。
横浜銀行で残高証明書の発行を申請する際は、窓口で記入する「残⾼証明書発⾏依頼書」に加えて以下の書類を提出します。
- 被相続⼈が亡くなったことを確認できる⼾籍謄本等
- 申請者が相続⼈、遺⾔執⾏者、相続財産管理⼈であることがわかる⼾籍謄本・審判書等
- 申請者の実印および印鑑証明書
- 残⾼証明書発⾏⼿数料
- 申請者の本⼈確認書類(運転免許証、保険証など)
書類の提出
凍結された口座から預金を払い戻すため、必要書類を提出します。書類の種類は「遺言書の有無」や「遺産分割協議書の有無」などによって異なるため、不安があれば横浜銀行の「相続手続きご案内サービス」で相談すると良いでしょう(代表的なパターンとそれぞれの必要書類については、次の見出しでも説明します)。
書類の提出先は、被相続人の取引店(窓口に持参)か、もしくは横浜銀行の「相続事務集中部署」(郵送)です。書類に不備がなければ数週間で指定した口座に払い戻されます。
必要書類について
ここでは払い戻しに必要な書類について、代表的なパターンごとに紹介します。
遺言書がない+遺産分割協議書がある
遺言書が存在せず、相続人同士の「遺産分割協議」で相続分を決める場合は、以下の書類が必要です。
横浜銀行所定の書類 | 相続手続依頼書 受取書 新印鑑届 ※取引内容・取扱方法などによって異なる場合あり |
相続人が用意する書類 | 産分割協議書(法定相続人全員の署名・実印での捺印が必要) 印鑑証明書(発行日から3か月以内のもの) 戸籍謄本(被相続⼈の出⽣から死亡までの連続した全⼾籍謄本) 相続人の全部事項証明書 ※養⼦縁組や離婚・婚姻等で⽒に変更がある場合 相続人(預金等の払い戻しを受ける/名義を引き継ぐ人)の実印・届け印 被相続人の預金通帳、証書、キャッシュカード等 |
遺言書がない+共同相続
遺言書が存在せず、遺産分割協議をおこなわず「共同相続」する場合は以下の書類が必要です。
横浜銀行所定の書類 | 相続手続依頼書 受取書 ※取引内容・取扱方法などによって異なる場合あり |
相続人が用意する書類 | 印鑑証明書(発行日から3か月以内のもの) 戸籍謄本(被相続⼈の出⽣から死亡までの連続した全⼾籍謄本) 相続人の全部事項証明書 ※養⼦縁組や離婚・婚姻等で⽒に変更がある場合 相続人(預金等の払い戻しを受ける/名義を引き継ぐ人)の実印・届け印 被相続人の預金通帳、証書、キャッシュカード等 |
遺言書がある
遺言書がある場合は主に以下の書類が必要です。ただし遺言書の内容によって必要書類が変わることもあります。
横浜銀行所定の書類 | 相続手続依頼書 受取書 ※取引内容・取扱方法などによって異なる場合あり |
相続人が用意する書類 |
遺言書(自筆証書遺言は原本、それ以外は正本か謄本) 印鑑証明書(受遺者と遺言執行者全員分・発行日から3か月以内のもの) 戸籍謄本(被相続人の死亡日の記載があるもの) 相続人の全部事項証明書 ※養⼦縁組や離婚・婚姻等で⽒に変更がある場合 相続人(預金等の払い戻しを受ける/名義を引き継ぐ人)の実印・届け印 被相続人の預金通帳、証書、キャッシュカード等 |
口座凍結前の預金引き出し
横浜銀行に相続発生の連絡をすると被相続人の口座は凍結されます。このため、葬儀費用や当座の生活資金のため、銀行に連絡する前(口座が凍結される前)にある程度のお金を引き出しておくこともあるでしょう。
しかし口座凍結前の預金引き出しには2つのリスクがあります。
共同相続人とトラブルになる可能性
リスクの一つ目は「共同相続人とトラブルになる可能性がある」ことです。預金口座の中身も相続財産の一部ですから、本来であれば遺産分割協議よりも前に相続人の一人が引き出すことは認められません。
もし葬儀費用などに充てるためどうしても預金を引き出す必要があるなら、あらかじめ共同相続人に事情を説明し、同意を取り付けてから引き出すようにしてください。また使った分の領収書を保管して、用途を証明できるようにすることも大切です。
相続放棄・限定承認ができなくなる
もう一つのリスクは、被相続人の口座から預金を引き出すと「相続放棄や限定承認ができなくなる」という点です。
相続放棄とは文字通り相続の一切の権利を放棄すること、限定承認とはマイナスの相続財産(借金)を精算した後に財産が残っている場合のみ相続することです。いずれも「被相続人の借金を引き継がない」ための制度といえます。
しかし被相続人の預金を相続人が引き出すと、その人は「単純相続」したとみなされます。単純相続とは借金を含むすべての相続財産を引き継ぐことで、いちど単純相続したとみなされた場合、その後に相続放棄や限定承認の手続きをすることはできません。
口座凍結後の仮払い
上記のリスクを避けつつ、払い戻し前に被相続人の預金を使う方法に「仮払い」があります。仮払いとはいったん凍結された口座から条件付きで仮の払い戻しを受けることです。
仮払いには2通りの方法があります。
銀行窓口で仮払いを受ける
一つ目の仮払いは、銀行窓口で直接「仮払いを申請」することです。この申請は相続人の一人が単独で行うことができますし(他の相続人の同意は不要)、仮払いが必要な理由を説明する必要もありません。
ただし仮払いの額には上限があります。具体的な上限額は、以下のうちのいずれか低い額です。
①相続開始時の預貯金残高 × ⅓ × 仮払いを申請した人の法定相続分
②150万円
家庭裁判所に仮払いを申し立てる
二つ目の仮払いは、家庭裁判所に「預貯金債権の仮分割の仮処分」を申し立てることです。もしこれが認められれば150万円を超えて仮払いを受けることも可能です(ただし法定相続分の全額まで)。
ただし申し立ての際は「債務弁済や相続人の生活費の支弁などのため」といった、仮払いを受ける理由を説明しなければなりません。また裁判所への手続きとなるため、手間や時間、そして費用も必要です。
横浜銀行の相続サポート
横浜銀行では、相続手続のサポート制度を多数用意しています。すでに相続が発生している場合はもちろん、将来の相続にそなえた相談やサービスも受けられるため、ぜひ活用してみてください。
相談サービス
『相続に関する相談会』
相続の希望や悩みについて「まずは相談してみたい」という人が気軽に利用できる休日相続相談会です。毎月第1日曜日に「湘南シークロス支店」「横浜駅前支店」の2店舗で実施しています。
『相続手続きデスク』
横浜銀行の「相続手続きデスク」が、必要書類や手続きの流れなど相続手続に関する一般的な質問に答えてくれるサービスです。
『相続手続きご案内サービス』
インターネット上で相続の状況や条件を入力すると、相続手続に必要な書類を案内してくれるサービスです。
相続に備えるサービス
『はまぎん・おかねの信託』
横浜銀行が「受託者」となって資産を預かる信託サービスです。あらかじめ受取人を指定しておけば、もしもの際にも遺産分割協議なしで一時金を支払うことができます。
また「受益者代理人選任特約」を利用すれば、もし本人が認知症や寝たきりなどになった場合でも、預かった資産(信託財産)からの引き出しや振り込みを信頼できる受益者代理人に任せることができます。
『遺言信託』
遺言書の作成と、作成した遺言書の保管、および実行をサポートするサービスです。
- 家族関係を円満に維持して、相続⼿続を円滑に行いたい
- 遺産を事業・財産・相続⼈の状況に応じて配分したい
- 法定相続⼈以外に財産を譲りたい
- 配偶者に感謝の思いを贈りたい
- 相続⼈が多い、または他の相続⼈が遠隔地に住んでいる
『財産承継プランニング』
現在の財産状況を分析して、今後の財産計画をサポートするサービスです。
- 財産内容を把握して、資産承継に向けた考え⽅や⽬的を整理したい
- ⾃⾝や配偶者の⽼後、残される家族のために、現在の財産をきちんと把握しておきたい
- 財産内容を把握して、 計画的に財産の分与(贈与・寄付)をおこなっていきたい
『個人信託』
財産の「管理・運用」や「承継・売却」をしたり、将来の相続発生時に備えてプラン通りの財産管理をするための信託サービスです。
- ⾃⾝の財産管理に不安や負担を感じている
- 扶養したい相手に、お金を確実に渡るようにしたい
- 健康不安に備えて財産管理を託す準備をしておきたい
- 円滑に財産を承継したい
- 事業承継対策をしておきたい
- ⼆次相続の配分まで決めておきたい
『成年後見制度取次』
将来の意思能力や判断能力の低下に備えるため、あるいはすでに能力が低下している人をサポートするために、財産管理や生活支援を行うサービスです。
- 将来認知症になったときのために、サポートしてくれる⼈を選んでおきたい
- 将来の健康不安に備えて、第三者に財産管理を託す準備をしておきたい
- 判断能⼒が低下していて、⾃⾝の財産管理に不安を感じている
- 判断能⼒が衰えたあとも、家族に迷惑をかけずに余⽣を送りたい
- 認知症になった親名義の不動産を売って施設の⼊所費⽤に充てたい
- 遺産分割協議をおこなう必要があるが、相続⼈の中に認知症の人がいる
相続発生後のサービス
『遺産整理業務』
相続手続に伴う心理的・身体的な負担を軽くするため、以下のような相続人を対象に遺産分割手続のサポートをするサービスです。
- 相続⼿続をする時間的な余裕がない
- 遺産分割⽅法についてアドバイスしてほしい
- ⾃筆証書遺⾔があるが、その後の⼿続きがわからない
- 相続⼈が多い、または他の相続⼈が遠隔地に住んでいる
- 相続⼿続きを円滑におこないたい
『相続手続き支援サービス(相続あんしんサポート)』
専門会社のサポートを受けながら相続手続を行えるサービスです。申し込みはインターネット上で行います。
『相続定期預金』
相続人が受け取った相続財産(相続手続完了日、相続財産受取日のいずれかから1年以内に受け取ったもの)から「50万円以上の期間3か月(自動継続)定期」を預け入れた場合に特別金利が適用されるサービスです。
まとめ
横浜銀行の相続手続は、他の金融機関での相続手続と基本的には同じです。ただし横浜銀行では、相続手続に関する相談窓口や相続発生前・発生後のサポートサービスが充実しています。ぜひこれらのサービスを最大限に活用して、スムーズな相続手続を目指してください。