条件付き遺言は有効?認められる条件・認められない条件の違いとは

遺言で財産を譲る遺贈には、さまざまな「条件」を付けることができます。今回は条件付き遺言の種類と具体例、条件付き遺言の注意点などについて解説していきます。

 

条件付き遺言の作成は可能

自分の死後に実現したいことややってほしいことがある場合、遺言書で条件付きの遺贈を行うことができます。たとえば「ある条件が実現したら財産をあげる」「約束を守ったら財産をあげる」といった具合です。

条件付き遺言は大きく分けて、

  • 停止条件付遺
  • 解除条件付遺贈
  • 負担付遺贈

の3種類です。

 

停止条件付遺贈

停止条件付遺贈というのは「停止条件付きの権利」、つまりある条件が実現(事実が発生)したときに効力が発生する遺贈のことです。

停止条件付遺贈の一例として「大学に合格したら100万円をあげる」という遺贈について考えてみましょう。この場合、遺言者が死亡すると受遺者(遺贈を受ける人)は停止条件付きで100万円の権利を得ます。そして条件である「大学入学」が実現した場合、停止条件が解除されて実際に100万円を受け取ることができます(逆に大学に入学しない限り100万円は受け取れません)。

 

解除条件付遺贈

解除条件付遺贈というのは「解除条件付きの権利」、つまりある条件が実現(事実が発生)したときに効力が失われる遺贈のことです。

たとえば「大学を中退したら100万円の遺贈は効力を失う」という遺言内容の場合、受遺者は大学に通い続ける限り(無事に卒業した場合も含め)100万円を受け取ったままでいることができます。ただし何らかの事情で中退すると、その時点で100万円の権利は失われます。

 

負担付遺贈

負担付遺贈とは、「負担と引き換えの権利」、つまり何らかの義務と遺贈を受ける権利が対になった遺贈のことです。

具体例としては「最後まで介護してくれたら自宅をあげる」「事業を引き継いでくれたら会社をあげる」といった遺言が挙げられます。負担付遺贈は、介護をする、事業を引き継ぐといった条件(負担)を守らなくても遺贈の効果そのものが発生するという点で条件付遺贈とは違います。

ただしこの場合、他の相続人や遺言執行者が負担義務を履行するよう催告して、それでも義務が果たされない場合に家庭裁判所に遺言の取り消しを申し立てることが可能です。

関連記事:『行政書士の遺言書作成費用はいくら?費用の相場や他の専門家との違いについて

 

条件付き遺言が問題になるケース

条件付き遺言は基本的に「有効」とはいえ、いくつか問題になるケースがあります。

 

条件の成就前に受遺者が亡くなる

そのひとつが「条件が成就する前に受遺者が死亡」することです。遺言書の中で条件付き遺言の受遺者として指名されていた人が条件の実現前に亡くなったり、遺言者よりも先に亡くなった場合、遺言の効力はどうなるのでしょうか。

このようなケースでは、受遺者による条件の成就は不可能です。このため遺言者が別段の遺言を残していない限り、条件付き遺贈の効果は失効します。

条件付き遺言をする場合は、あらかじめこうした事態も想定した取り決めを設けておくべきです。たとえば「大学に合格したら100万円をあげる。ただし大学入学前に受遺者が死亡した場合、その弟が大学に合格したら100万円をあげる」といった内容が考えられるでしょう。

 

遺言者が亡くなる前に条件が成就する

「遺言者が死亡する前に条件が成就」した場合も問題になります。遺贈というのはそもそも、遺贈者が亡くなることによって発効するからです。ではこのような場合、遺言の効力はどうなるのでしょうか。

結論から言えば、特に何の問題もありません。条件付き遺言がただの遺言に変わるだけです。すでに条件は達成していますから、遺言者が亡くなった時点で遺贈の効力が発生します。

もっとも遺言者はまだ生きているわけですから、無用のトラブルを避けるために遺言を書き換えておくほうがよいでしょう。

関連記事『遺言書の撤回は可能?遺言書の種類に応じた手続きと注意点について解説

 

遺言者の死亡から10か月以内に達成できない条件

遺言に記載される条件は、遺言者の死亡後すぐに達成できる条件ばかりとは限りません。しかし相続税の申告期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」です。ではもし「10か月以内に達成不可能な条件」が設定されていた場合、相続税の申告はどうすればよいでしょうか。

条件が成就するまで遺贈は発生しません。このようなケースでは、遺贈される予定の財産は「未分割財産」として、法定相続人が取得したものとして相続税を申告します。その後、条件が成就したときに未分割財産は受遺者に遺贈され、法定相続人は「条件が成就した日の翌日から4か月以内」に「更正の請求」を行います。なおこの時の財産評価の基準は、条件が成就した日ではなく相続開始日です。

関連記事『相続税の仕組みとは?相続税申告が必要なケースと申告の手順について

 

認められない条件・避けたほうがよい条件

遺言に記載する「条件」の中には、認められないものや避けた方がよいものもあります。

 

身分に関する条件

まず「身分」に関する条件は認められません。たとえば以下のようなものです。

『結婚する/しない』
『離婚する/しない』
『養子にする/しない』
『認知する/しない』

このように法律上の身分を作り出したり、消滅させたりする条件を記載することはできません。

 

あいまいな条件

「あいまいな条件」は、解釈をめぐるトラブルを招く可能性があるため避けたほうがよいでしょう。たとえば以下のようなものです。

『幸福なら』
『生活に困っていたら』

こうした内容は、解釈次第でどうとでもなります。遺言書に書く条件は、「●●の資格を取得したら」「大学に合格したら」「生活保護を受けていたら」といった具合に、もっと具体的であるべきです。

 

簡単に撤回できる条件

「簡単に撤回できる条件」とは、たとえば約束の条件を達成して遺贈を受けたあと、すぐに約束を反故にできるようなものです。

たとえば『「受遺者の死亡後に遺贈者の息子に財産を譲る」という遺言を作成する』ことが条件だったとします。遺言書の作成は簡単ですから、すぐに条件を達成して遺贈を受けることができるでしょう。しかし遺言書は撤回も簡単なので、遺贈を受け取ってすぐに別の遺言内容に変更される可能性もあります。

このように遺贈者の意思が簡単に裏切られてしまうような条件は避けるべきでしょう。

 

遺贈に見合わない条件

「遺贈に見合わない条件」、特に遺贈される財産に見合わないほど負担が重い条件も避けるべきです。具体的には以下のようなものが考えられます。

『遺贈者の負債5,000万円を引き受けてくれたら100万円を遺贈する』

このように条件と遺贈が釣り合わない遺言は、それ自体は無効ではないもののあまり意味はありません。というのも民法第1002条第1項には次のように書かれているためです。

負担付遺贈を受けた者は、遺贈の目的の価額を超えない限度においてのみ、負担した義務を履行する責任を負う。


ちなみに受遺者に指定された人は、遺贈を受けたくない場合は権利を放棄できます。

 

まとめ

遺言者は、自分の想いや目的に合わせて条件付き遺言を利用できます。ただし条件の設定にはいくつか注意も必要です。条件付き遺言を作成する際は、せっかくの遺言が無効になったり、受遺者や相続人に混乱を与えてしまうことがないよう、専門家に相談してみることをお勧めします。

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