相続人のなかに障害者がいる場合、通常とは異なる点がいくつかあるので注意しましょう。
通常の遺産相続では、相続人同士で協議して、全員の同意をとり、誰が何を相続するのかを決めていきます。
しかし、意思決定能力に問題があるほどの障害者が相続人のなかにいた場合、同意をとることが難しく、協議が進められません。
最悪の場合、遺産分割が無効となり故人の財産が凍結してしまうリスクもあります。
成年後見人を選任する必要があるケースも
意思決定能力のない相続人に代わり、重要な契約や話し合いに参加する役割が「成年後見人」です。
親族が選ばれることもあれば、専門家が請け負う場合もありますが、家庭裁判所によって専門家が選出されるケースがほとんどです。
成年後見人の選定には時間がかかるケースもあるので注意しましょう。
後見人には報酬が発生するというのも、見落とせないポイントです。
また、基本的に成年後見人は「相続人の財産を守る」ことを務めとしているので、後見人本人の取り分ができるだけ多くなるように話を進める可能性が高いです。
被相続人が亡くなってから準備を始めたのでは手遅れになりかねないので、早めに準備しておくことが重要になってきます。
相続税において障害者控除を受けられる!
障害者控除を活用することで節税につながります。
相続人が85歳未満の障害者だった場合、相続税から税金が控除できます。
国内に住んでいること・障害者であること・法定相続人であることの3点すべてに当てはまっていることが条件です。
ただし、昔の相続ですでに障害者控除を受けている場合は控除額が制限されてしまうので、きちんと調べた上で進めましょう。
実際の控除額
一般障害者の場合は10万円×(85-年齢)、特別障害者の場合は20万円×(85-年齢)が、控除額になります。
たとえば、30歳の一般障害者が控除を受ける場合、10×(85-30)=550万円が控除されます。
申告要件はなく、特別な手続きは必要ないので、控除の受け忘れには注意しましょう。
扶養義務者も控除を受けられる可能性がある
控除額が障害者本人の相続額を超えた場合、超過分を扶養義務者に該当する者の相続税控除にあてることが可能です。
ただし、障害者とその扶養義務者が、同一の被相続人から相続か遺贈を受けている場合に限ります。
扶養義務者とは、配偶者・直系血族・兄弟姉妹・三親等内の親族で、家庭裁判所の審判で扶養義務者となった者あるいは障害者と生計を同じくする者のことを指します。
自分が障害者の扶養義務者にあたる場合は、控除の対象になる可能性があるので注意しましょう。
前述のとおり、障害者控除は申告要件ではありません。
障害者も扶養義務者も、障害者控除によって発生した納税額の変化を提出する義務はないということを、覚えておきましょう。