相続権とは亡くなった人の財産(現金や預貯金、不動産など)を相続人となった人が引き継ぐ権利です。
国際結婚などで、相続人のなかに外国籍をもつ方が含まれる場合、通常通りに相続できるのか疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、日本における外国籍をもつ方の相続権とその相続手続きについてご説明します。
外国籍をもつ場合でも相続することができるのか
日本では、外国籍の方であっても相続人と認められれば、日本国籍の方と同様に遺産を相続する権利があります。
被相続人が日本国籍であることは必須条件ですが、相続人には配偶者在留資格の有無やビザの種類、婚姻・同居期間なども相続権に関係ないとされ、日本の法律に基づいて相続が行われます。
遺言についても、日本国籍の方が作成した遺言書は日本の法律のもとで成立するため、その効力は相続人の国籍とは無関係です。
しかしながら外国籍の方の場合、通常の相続手続きに必要な書類がそろわない可能性があるので、日本国籍の方が行う手続きよりも手間がかかります。
外国籍の方が相続する場合の手続きについて
国籍に関係なく、相続人は相続登記を行う際に住民票の写しを提出しますが、外国籍の方の相続権が2012年7月8日以前に発生しているときには注意が必要です。
なぜなら国籍変更履歴や上陸許可年月日、居住歴などの情報が住民票に記載されていない可能性があり、それらの情報を証明する外国人登録原票の写しを提出しなければならないからです。
外国人登録原票の写しは法務省へ依頼すると発行されますが、発行してもらうまでには時間がかかります。
相続手続きをスムーズに進めるためには、早めに確認して準備を進めておくことをおすすめします。
また、台湾など戸籍制度がある国の方が相続する場合、戸籍証明書に加えてそれを日本語訳した書類が必要です。
戸籍制度がない国の方であっても、以前に日本国籍を取得しており相続権が発生した場合は、過去の戸籍をもとに相続権を証明しなければなりません。
戸籍制度がない国の方で、過去に日本国籍を取得したこともないのであれば、日本国籍を所有する配偶者との婚姻関係を証明することで相続権の証明も可能になります。
遺産分割協議が行われた場合、日本国籍の相続人は協議書への署名押印と印鑑証明書が必要ですが、外国籍の相続人はサイン証明書が必要です。
サイン証明書は居住地の日本大使館・日本領事館で発行してもらえますが、パスポートや住所を確認できる書類などを準備する必要があります。
発行には事前の予約が必要な場合もあるので、注意してください。
外国籍の方でも日本国籍の方と同様に相続が認められるとはいっても、その手続きは通常より時間と手間が必要な作業になります。
したがって円滑な相続のために、それぞれのケースで相続手続きに必要な書類などを把握しておいて、事前に準備を進めておくことが大切です。