相続における慰謝料請求権について

 

慰謝料とは、違法な行為によって精神的な苦痛を受けたときに、その埋め合わせを行うために支払う金銭のことです。
離婚や事故などで精神的損害を負った場合に、相手に慰謝料を請求する権利のことを、慰謝料請求権といいます。
しかしながら、被害者が亡くなった場合、その慰謝料請求権がどうなるのか疑問に思っている方はいるのではないでしょうか。
そこで今回は、亡くなった方の慰謝料請求権を遺族が相続することは可能なのか、また慰謝料を受け取った場合の相続税や所得税についてご説明します。

 

慰謝料相続権は相続できるのか

慰謝料を請求できる方が、請求前に亡くなってしまったり、請求した慰謝料を受け取っている途中で亡くなってしまったりした場合、請求者の遺族がその権利を相続できます。
請求者が死亡したとしても、権利は消えずに有効なままだからです。
慰謝料請求権は知的財産権であり、金銭債権とされるため、財産を引き継ぐ相続の範囲に含まれます。
慰謝料の請求前に請求者が亡くなった場合、相続人が代わりとなって請求することも可能です。
ただし、離婚の慰謝料請求は離婚後3年、離婚原因に対する慰謝料請求は損害と加害者の存在を知り得た時点から20年、交通事故の慰謝料請求は相手が債務を認めた時点から5年以内に行わなければ無効となってしまいます。
慰謝料の請求における時効については、被相続人である請求者が亡くなった時点を基準とするのではなく、それぞれのケースによって期限が変わるので注意が必要です。
慰謝料の請求者が、慰謝料の支払について内容を取り決める前に亡くなった場合は、慰謝料請求権を引き継いだ相続人が支払の義務者や条件を定めることになります。
一括での慰謝料支払が困難で、支払を分割払いに定めた状況で請求者が亡くなったのであれば、その分割金を受け取る権利は、相続人へと引き継がれます。

 

慰謝料を相続する際に税金はかかるのか

被害者が亡くなったことで遺族に支払われる慰謝料については、遺族の方の所得として認識されるので、相続税ではなく所得税の対象となります。
なお、法律上では予想外に発生した損害の補填としての損害賠償金・慰謝料については、課税対象ではなく所得税はかからないとされているので、相続税・所得税のどちらもかかりません。
また、請求者が亡くなった後に相続人によって内容が取り決められて支払われた慰謝料は、被相続人が所有している財産ではないため、相続税の対象ではありません。
しかしながら、請求者への支払内容が決定した状態で本人が慰謝料を受け取らずに死亡した場合、その慰謝料は相続人へと引き継がれるので、相続税の対象となります。
つまり慰謝料が相続税の対象となるかどうかは、請求者の死亡時期によって変化するということです。
実際には、死亡事故による慰謝料について被害者が亡くなる前に内容が定められることはまれなので、慰謝料請求権の相続については、相続税・所得税どちらも非課税となる場合が多いです。

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