遺産とは相続財産とも呼ばれ、亡くなられた方が遺した財産のことです。
遺産のなかには死亡後も収益が発生するものがあり、以下の例が挙げられます。
- 不動産の管理人をしていた場合:家賃収入(共益費や保証金なども含む)
- 預貯金がある場合:預貯金の利息
- 株主の有価証券を保有していた場合:株主配当金
相続開始後に発生した遺産収益はどうなる?
遺産が収益不動産だった場合、被相続人が亡くなってから遺産分割が終了するまでの期間の賃料(遺産の収益)は、誰のものになるのでしょうか。
民法には明確な規定がないため、誰のものになるのかについては裁判で争われます。
最高裁の考え方は、「賃料は相続人全員がその相続分に応じて取得する」というものでした。
遺産の収益は遺産の使用により別途対価として生じたものであり、遺産そのものではないという解釈です。
民法上では「法定果実」と呼ばれ、もともとの遺産とは別個の財産として扱うことになります。
しかし法定果実を別個に扱う場合、遺産分割後に法定果実を誰が取得するのかを、さらに協議しなければなりません。
遺産分割には時間と手間がかかることが多いので、何度も協議するのは現実的とはいえないでしょう。
そのため実務上、法定果実も遺産分割の対象に含めて手続きを進めるケースがほとんどです。
その場合は、相続人全員の合意が必要となることに注意しましょう。
民法では遺産分割協議が成立した場合、遡及効があるとされているため、相続人全員がその相続分に応じて取得するという考え方は矛盾しているように見るかもしれません。
遡及効とは、亡くなった父親の収益不動産を長男が取得することになった場合、父親が死亡した時点から長男は収益不動産を所有していたことになるというものです。
所有開始日をさかのぼるなら、相続開始から遺産分割が終わるまでに発生した法定果実は、取得した長男のものになるという考え方もできるでしょう。
しかし最高裁の考え方は「その帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない」となっているので、相続人全員に帰属することになります。
長男と次男で収益不動産を共有していた場合、最終的に取得したのが長男であったとしても、法定果実は平等に分配されるということです。
分割するまでの遺産はどのように管理するのか
民法では被相続人の死亡時に相続人が複数いる場合、遺産はまず相続人の全員の共有という扱いとなり、遺産分割協議の成立をもって共有を解消するとされています。
遺産分割協議の成立までには一定の期間が必要となるため、管理が必要な遺産がある場合は、誰かが行わなければなりません。
遺産の管理は相続人が共有で行うか、管理人を選任する方法があります。
共同で管理する場合は、民法の共有の規定により各相続人は遺産の保存行為を単独ですることが可能です。
その他の管理行為については、各相続人の持分の過半数で決定することになります。
管理人を選定する場合は、相続人もしくは相続人以外の第三者を選定することも可能です。
遺産の管理によって生じた費用は相続財産のなかから支出され、実務上は遺産分割協議の際に精算することになります。