近年は家族葬や葬儀を行わずに火葬式を行う方も増えていますが、参列者を呼ばない葬儀でも、訃報を知った知り合いや近所の方、親族などから香典が届けられるケースは少なくありません。
一般葬を行う場合には、亡くなった方の立場はもちろん、ご遺族の社会的地位などによっても、多額の香典が集まることが多いものです。
それでは、いただいた香典はいったい誰のものになるのでしょうか。
お香典は相続財産ではない
お香典というのは、亡くなった方の死後に受け取るものです。
民法上、人間の権利の帰属は出生によってはじまり、死亡によって終了します。
つまり、死亡した後に寄せられる香典は故人の財産にはならないため、相続財産にもなりません。
そのため、遺産分割の対象にはならず、法定相続人の間で誰が取得するなど決める必要は生じません。
いただいた香典はどうなる?
香典というのは、通常、葬儀の費用などに当てられます。
香典をいただけば、香典返しもしなくてはならないので、通常はいただいたお金が手元に残ることはありません。
家族葬のケースでもそれなりに葬儀費用がかかりますので、香典返しを半返しなどで行ったとしても香典だけでは賄えず、遺族が支払う必要も生じます。
なお、香典は相続財産にはならないため、相続税の課税対象にもなりません。
香典は喪主やその他の遺族に対する贈与の性質をもちますが、故人・遺族・香典を贈る人の立場などから考えると、社会通念上相当の範囲の金額であれば、贈与税もかからないとされています。
香典をめぐるトラブル
香典の金額がすべて葬儀費用で消えてしまえば、通常大きな問題は起こりません。
しかし、稀に葬儀費用を大きく上回るような香典額をいただいてしまった場合に、相続人の間で揉めることもあります。
香典は通常、喪主が管理しているため、出費よりも金額が多ければそのまま喪主の財産になりがちですが、それを納得できない相続人が現れることもあります。
たとえば、喪主が高齢の配偶者で子どもたちが仕事をしていているという場合、立場などによっては勤務先や取引先などから多額の香典が集まる場合も少なくありません。
子どもの1人が喪主を務める場合に、喪主よりも他の兄弟姉妹の関係者から届く香典のほうが圧倒的に多い場合もあります。
このような場合、香典の余剰が出ると「香典額が多かったのは自分がいたからだ。」とか、「自分の関係者からいただいたものは自分が取得する権利がある。」といった主張をする相続人が現れ、トラブルに発展することがあるのです。
葬儀費用の支払いや香典返しを行っても香典が残る場合、喪主が取得するという見解と、相続人が法定相続分にしたがって取得すべきといった考え方があります。
あくまでも相続財産ではないので遺産分割協議の対象にはなりませんが、余剰金が生じた場合には法定相続人で集まり、どうしたらいいかお互いに納得がいくように話し合ってみましょう。