遺贈とは、遺言書に基づいて被相続人の財産が相続人以外に譲られることです。
法定相続人以外に財産を譲渡できる遺贈の中にも、条件付遺贈と負担付遺贈の2通りの方法が存在します。
これらの違いについて正しい知識を身に付けておくと、相続におけるトラブルの回避につながるでしょう。
条件付遺贈とは
遺言によって遺言者が所有する財産などを法定相続人以外が受遺者になれる遺贈のうち、条件を満たしたときに財産を譲渡されるのが、条件付遺贈です。
たとえば、「長男が大学を卒業したら財産を遺贈する」というケースが該当します。
遺言執行時に長男がまだ大学を卒業していなければ、大学を卒業するという条件を満たすまで遺贈が停止されるので、「停止条件付の遺贈」とも呼ばれています。
このように条件付遺贈では、条件が成就するまでは財産を受け取れないため、財産を受け取るまでに時間がかかることが多いです。
負担付遺贈とは
負担付遺贈とは、遺言に記されている責任を果たせば、すぐに有効となる遺贈です。
たとえば、「母の介護を条件に、不動産を遺贈する」「マンションの管理を条件に、マンションの権利を遺贈する」といったものがあります。
つまり、遺言書に記載された条件を果たしていなければ、財産の遺贈を受けられません。
遺言書に添えられた条件は、お願いという程度のものではなく、法律上の義務として受遺者に課されます。
そのため、上記の例の場合、母の介護やマンションの管理業務を怠っていることが他の相続人によって認められると、遺言書そのものの取り消しを家庭裁判所に請求されてしまう可能性があります。
ただし、遺言書に記されている条件が自身の負担になると感じる場合は、遺贈を拒否することが可能です。
また遺贈の効力が発揮され土地などの権利が受遺者に移った後でも、負担を履行しない、あるいは履行できなくなった場合に遺贈が取り消しになる場合もあります。
受遺者の側として条件を満たすことが難しいと思う場合においても、異議を申し立てたり一方的に条件を引き下げたりすることはできません。
したがって、受遺者となったからといっても条件付遺贈は無条件で成立するわけではなく、条件を満たした時点で初めて法的な効力が生じることを理解しておきましょう。
条件付遺贈と負担付遺贈の違いは効力が発生するタイミング
条件付遺贈と負担付遺贈との大きな違いは、遺贈の効力が発生するタイミングです。
遺言書に記されている条件を満たしたときに効力が生じる条件付遺贈に対して、負担付遺贈は遺言者の死亡後にすぐに法的な効力をもちます。
当然ながら、遺贈にも負担付遺贈にも遺言のルールが定められており、条件の成就や期限の到来を見極めながら遺言の効力が生じた時点で義務を履行しなければなりません。
遺贈によってなんらかの負担を感じずに穏やかな暮らしを続けるためにも、受遺者となってから不都合を感じている場合は、法律の専門家に相談することをおすすめします。