遺言書といえば、自らの死期が近いと感じている高齢者が作成するものというイメージが一般的です。
しかし人間は自らの死期を簡単に予測することはできず、急な事故などで遺言を残せず亡くなる方も少なくありません。
まだ若いうちに遺言を作成しておくことはできるのか、何歳から遺言書は法的に認められるのかといった点をまとめました。
遺言書が法的効力をもつのは15歳から
民法では、15歳以上になると、作成した遺言書の法的効力が認められます。
15歳になれば遺言を作成するに足りる意思能力があると判断されていますが、現代の感覚では若い年齢と感じるかもしれません。
しかし、現実には15歳から遺言の法的効力が認められるので、若くして難病にかかってしまった方などが遺言を作成しておくことも可能です。
逆にいうと、15歳以上であっても心神喪失状態などで意思能力がないと認められる場合は、遺言書に法的な効力が認められません。
病気や認知症のリスク前に遺言書作成を
15歳以上になればいつでも遺言書を作成できるのですから、遺産相続などで決めておきたいことがあり、遺言を作成したいと考えた際は、早めの行動がおすすめです。
たとえば認知症が進行してしまった場合など、若くても遺言を作成することが難しい状況はあります。
病気に関しても同様で、人間ドックや病院の受診で大病が見つかるケースばかりとは限りません。
心臓病・脳梗塞などの病気であれば突然死のリスクが高く、遺言を作成していないうちに本人が望まぬ死を迎える可能性があります。
ただし、定年退職・子どもの独立などで生活・経済状態がある程度安定してからでないと遺産相続について考えることは難しく、現実的には60代になってから遺言について考えはじめる方が多いです。
いつでも撤回・書き直し可能な遺言書
若いうちに遺言書を作成したものの、年月が経って相続したい人物が増えるなど、状況が変化する可能性は少なくありません。
遺言書は、何度でも本人の意思で撤回・書き直しをすることが可能です。
公正証書の形で遺言を作成する場合にはその都度手続きや費用が発生しますが、若いうちに遺言を作ることで生じるリスクはほとんどありません。
ただし、公正証書ではない形で遺言を作成する場合は、遺言書が複数あると混乱のもとになるので注意が必要です。
遺言書が複数ある場合はすべての遺言の内容が有効とされますが、複数の遺言書で内容に矛盾が生じる場合も考えられます。
そのような場合は、遺言書の日付が一番新しいものが有効とされます。
古い遺言書が公正証書で、新しい遺言書が公正証書の手続きをとっていないものであってもこのルールは変わりません。
ただし、自筆の遺言書は書き方が法的にのっとったものでなかった場合、法的効力をもたないと判断されるケースがあります。
遺産相続などの重要な問題について遺言書を作成しておきたい場合は、手間がかかっても公証役場で手続きをとっておくことをおすすめします。
公正証書遺言は公証役場で記録が残るので、遺言書を誤って紛失してしまったり、悪意のある方に内容を改ざんされたりするといったリスクを軽減することも可能です。