自分が死んだ後に行われる葬儀について、気にしている方は決して少なくありません。
しかし、自分の葬儀は自分で行えないため、家族や親族に自分の意向を伝えておく必要があります。
それでは、遺言で葬儀の内容について記載しておくと、方法などを指定することはできるのでしょうか。
遺言書で効力をもつ項目は限定的
遺言書を作成するときは、死後の不安を減らすためにさまざまなことについて記載したいと考えがちです。
しかし遺言書で法的な効力をもつ内容は民法で明確に定められているため、遺言書に記載されている事項のすべてが実行されるとは限りません。
葬儀についても民法の遺言に関する条項で記載がなく、遺言は葬儀が終わってから内容を確認することが一般的であるため、遺言書に葬儀について記載していても希望通りにならない可能性が高いです。
葬儀方法や費用に関して希望があれば別に記載を
葬儀に関して希望がある場合、遺言とは別にエンディングノートのような形で書き記しておくことをおすすめします。
現在終活として多くの方が書き残しているエンディングノートでは、葬儀に関する事項以外でもさまざまなことを書き残せます。
介護が必要になった場合のこと、後見人に関すること、延命治療・尊厳死に関することはもちろん、お世話になった方や家族への感謝の気持ちを伝えることも可能です。
葬儀の方法や費用についても、遺族に迷惑をかけたくない・お願いしたいことがあるという場合は、ぜひエンディングノートに記載しておきましょう。
葬儀に関して気になることがあれば死後事務委任契約も可能
最近は核家族化が進み、家族や親族が現在の住まいから遠い場所にいるという高齢者の方も少なくありません。
葬儀に関することや役所などで必要な手続きを行ってくれる方が周囲にいないと、困ってしまうでしょう。
そうした場合に利用できるのは、死後事務委任契約という制度です。
自分の死後発生する煩雑な事務手続きなどを誰かに委任しておける制度なので、親戚や友人知人以外に行政書士・司法書士といったその道のプロに依頼する方も多くなっています。
具体的に死後事務委任契約では、以下のような事項について委任することが可能です。
- 死亡届の提出や年金資格抹消申請など、役所関係の手続き
- 葬儀や火葬・永代供養に関する事務手続き
- 家財道具などの遺品整理や処分
- 病院で発生した医療費や生前利用していた福祉施設利用料などの支払い
- インフラやクレジットカードなどの解約・清算など
- 親族への連絡やSNSで本人が亡くなったことをお知らせする作業
- パソコン、スマホなどの個人情報消去
当然これらのことはすべて自分の死後に第三者が行うことなので、すべて自分の希望通りに進められるとは限りません。
少しでも円滑に、希望通りにこれらの手続きを進めてもらうためには、できるだけ詳しく内容を記載しておくことが重要です。
死後事務委任は公正証書として内容を公証役場に記録でき、必要な葬儀費用などを預託しておくことも可能です。
葬儀費用などが足りず、委任した内容が実行できないような事態を防ぐためにも、必要に応じて預託金を残しておきましょう。