故人が生前に作成した遺言書をもとに相続の手続きを開始する場合、相続人全員の同意を得るためには、遺言書の内容を他の相続人にも知らせなければなりません。
複数の相続人のうちの1人が遺言書を隠し持っていた場合には、他の相続人は内容を知ることができないばかりか、手続きを進めることも難しくなってしまうでしょう。
特に遺産分割などにおいては家族や親戚間のトラブルにつながりやすいため、遺言書がある場合の相続手続きの流れ正しく理解しておく必要があります。
遺言書を保管している者は検認する義務を負う
遺産の相続などにおいて家族が分割協議に応じないケースは後を絶ちません。
遺言書の保管者には、家庭裁判所で行われる検認をしなければならないという義務があります。
検認とは相続人に通知して遺言書を開示する手続きのことで、応じない場合には過料が課せられる場合があります。
検認の義務を負わなかったり、遺言書を勝手に破棄したりすれば、民法上の根拠から相続権を失ってしまう可能性も少なくありません。
公正証書遺言であれば、公証人役場にて遺言書の謄本が手に入れられます
被相続人が生前に遺言書を書いていた事実を知っていたとしても、そもそも遺言書の存在を確認しないと相続などの手続きは進められません。
被相続人が公正証書遺言を作成していた場合には、戸籍などにより法定相続人であることを証明されたのち、遺言書の謄本を受け取れます。
自筆証書遺言および秘密証書遺言の場合、検認の手続きが必要
自筆証書遺言は文字通り被相続人が自ら作成した遺言のことで、公証人が関与しているものではありません。
秘密証書遺言は、公証人が作成に携わっていますが公証役場で保管する性質のものではなく、家庭裁判所を通じて検認の手続きを進めることになります。
相続人のすべてに検認の法定手続きが開始される旨が通知され、家庭裁判所で検認の手続きが行われた後、遺言書の写しの交付が請求できます。
相続人が検認手続きに応じてくれない場合の対応
不動産などの相続財産について、検認の手続きに応じずに開示を拒むケースがあります。
開示を要求しても検認に応じない場合には過料の処分がありますが、遺言書を強制的に開示させることは現行法上できません。
そこで、どうしても相続人のうちの誰かが開示に応じない場合には、家庭裁判所で調停を申し立てる必要があります。
遺産分割調停という申し立ての制度は、相続人同士の話し合いで折り合いがつかない場合に勧められる裁判所による手続きです。
相続が不利になると判断して身勝手に隠したり、破棄をしたりしている可能性が考えられる場合でも、憶測ではなく法的に立証する必要が生じます。
相続人同士の遺恨を生まないためにも正当な手続きをすることは好ましく、個人間で揉めてしまうことのないように、法律の専門家に相談するのがおすすめです。