遺言書を作成しておけば、被相続人の意思が明確になり、指定した相続人に所有する財産などを相続させることが可能になります。
遺言書に書かれている内容に基づいて遺産相続が行われるため、被相続人の死後に家族など、相続人同士のトラブルや揉め事が発生するのを防いでくれます。
しかしながら遺言書を書いたとしても、相続人などが発見できなければ法的な効力が発揮されません。
そのため、ふさわしい保管場所を知っておくことも、遺言書を作成するときに必要な知識といえるでしょう。
公正証書遺言の場合は保管場所に気を揉むことがありません
遺言書の作成方式は、被相続人が自ら執筆する自筆証書遺言と公証人により作成される公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類の中から自由に選択できます。
このうち後者の公正証書遺言と秘密証書遺言については、公証役場の公証人によって作成されます。
公証人とは法務大事が任命する法律のプロフェッショナルです。
国家公務員として法律の専門家が作成する遺言書の形式に不備が発生することはありませんから、安心できるでしょう。
中立公平な立場から法律的な根拠を踏まえた文書を作成するため、自分の意思を抜かりなく示しておきたい場合におすすめです。
公証人が作成した遺言書の原本は、公証役場で大切に保管されますから、保管場所についての心配もなくなります。
家族などの相続人に対しては、遺言書を作成したことと保管している公証役場の場所を伝えておけば、ほかに手続きなどを行う必要もありません。
公証役場で保管している場合、遺言者の生存中には本人以外に遺言書が開示されることはありませんから、秘密保持の観点からも公正証書遺言は有効といえるでしょう。
書面の作成と保管において費用がかかること以外に、公正証書遺言を選択するデメリットはほとんどありません。
一方で、秘密証書遺言で公証人が関わるのは遺言書の存在を認めるところまでで、内容はもちろん保管場所についても関与することはありません。
自筆証書遺言は法務局でも保管が可能になりました
公証役場で保管される公正証書遺言とは異なり、秘密証書遺言と自筆証書遺言については保管場所の責任を自ら負う必要があるため、保管している場所を忘れてしまうリスクや、火災による消失のリスクをなくすことが難しいです。
せっかく作成した遺言書が無効にならないように、令和2年よりスタートした法務局の自筆証書遺言の保管制度を検討してみるのもおすすめです。
保管場所を決める前に専門家へ相談しましょう
財産を厳重に保管できるイメージから、銀行の貸金庫を遺言書の保管場所に選ぶ方も少なくありません。
しかし貸金庫を空けるためには遺言者の印鑑証明を提出する必要があり、法定相続人全員からの同意がなければ貸金庫を開けられません。
そのため、遺言書の保管場所としてはリスクがあります。
あらゆるリスクを回避するためにも、保管場所について悩んでいる方は、法律の専門家に相談すべきでしょう。