建物の相続で揉め事が起こるケース
友人・知人が建物を相続したという話を耳にして「羨ましい」と感じる人も少なくないかもしれませんが、実は建物をはじめとする不動産の相続では揉め事が起こりやすく、深刻なトラブルの原因になってしまうことも珍しくありません。
なぜなら、建物はその性質上現金のように均等に分割することが難しい財産だからです。
たとえば、3人の子どもが父親の所有していた3件の建物を相続したとしましょう。
この場合、1人が1件ずつ建物を譲り受ければ丸く収まると考えるかもしれませんが、実際はうまくいきません。
建物によって所在地や面積、築年数などが異なるからです。
建物を譲り受けるならば、特別な理由がない限りは都市部の立地の良い場所に建つ物件を望むでしょうし、面積が広くて新しい建物のほうが望ましいと考えるでしょう。
このように、建物の相続では不公平感が出やすいため、揉め事が起こりやすいです。
また、不動産を相続すると翌年から固定資産税を納める必要があります。
現在住んでいる家から家族みんなで相続した建物に引っ越して生活するならばよいですが、特に使い道もなく空き家として放置しておくのであれば税金の支払いによって家計をひっ迫させる原因になってしまうかもしれません。
こういった理由から、相続した建物をすぐに売却してしまおうと考える人も多いでしょう。
建物を現金化すれば均等に財産を分割できるので、一見するとよい考えのように思われます。
しかし、これはあくまでも相続人のすべてが売却に賛成したときにのみ成立する話です。
たとえば、1件の建物を3人で相続した場合、2人は売却して現金化したいと思っても、残りの1人が建物を守りたいと思えば売却することはできません。
また、最近は住宅の供給が需要を上回る傾向にあるため、郊外にある物件や築年数が古い物件などは売りたくても買い手がつかないという可能性も十分に考えられます。
揉め事を未然に防ぐために
では、建物の相続でトラブルを避けるにはどうしたらよいのでしょうか。
最もよい方法は、遺言書を残して建物の処遇を決めてしまうことです。
そもそも相続人が財産を均等に分割するというのは法定相続が前提となっているからです。
遺言書を作成しておけば法定相続よりも遺言書の内容のほうが優先されるわけですから、相続人が揉めることは基本的になくなります。
「遺言書の作成は面倒だ」という人もいるかもしれませんが、自筆証書遺言ならば紙とペンさえされば自宅でいつでも作成可能です。
「遺言書の書き方がわからない」というときは公証役場に相談すれば公正証書遺言を作成してくれます。
手数料が必要になりますが、必要な手続きはすべて公証人が代行してくれるので、何らかの不備で遺言書の効力が無効になるといった心配がありません。
しかし、相続には遺留分があるので、たとえ遺言書を作成しても揉め事をまったくゼロにするということはできません。
「1人の相続人にすべての建物を相続させる」という内容の遺言書を作成しても、相続人から遺留分侵害額請求を起こされてしまえば、遺留分は他の相続人にも渡ることになります。