遺言書が無効になるケース
公証人が作成する公正証書遺言と違い、遺言者本人の手によって作成される自筆証書遺言では形式上の不備により遺言自体が無効となってしまうケースも少なくありません。
では、どのような場合に遺言書は無効になるのでしょうか。
その代表的な例をいくつか紹介します。
1.日付や署名、捺印がない
民法にも明記されているように、遺言書が法的に効力を発揮するためには、いつ誰が作成したのかを明確に示す必要があります。
そのため、「日付」「署名」「捺印」がない遺言書は無効となってしまうので注意しましょう。
日付については「◯年四月一日」のように、遺言書を作成した日が特定できる形式で記入します。
西暦・和暦はどちらを使っても構いません。
「◯年四月吉日」のような表現は日付が特定できないのでNGです。
「還暦の誕生日」のような表現も、日付を特定することは可能ですが避けた方がよいでしょう。
捺印に使用する印鑑は認印や拇印でも問題ないとされていますが、無用なトラブルを避ける意味でも実印を使用するのが無難です。
2.パソコンで作成されている
遺言書をパソコンで作成したために無効にされてしまうケースも増えてきています。
自筆証書遺言はその名のとおり自筆しなければ効力を発揮しません。
遺言書の本文はもちろんのこと、署名や日付についても必ず自筆で書くようにしましょう。
他人に代筆してもらうのもダメです。
3.修正や変更の方法に誤りがある
一度作成した遺言書を後日見返したときに誤字脱字が見つかったり、内容を変更したいと思ったりすることもあるでしょう。
そのようなときは正しい方法で修正や変更をしなければ遺言書が無効になってしまうことがあります。
遺言書の内容を修正・変更する場合、二重線を用いて消すだけでなく、その部分に印を押して訂正したい内容を加筆しなければなりません。
もし印がなければ遺言者本人でなく利害関係を持つ誰かが自分に有利になるように内容を書き換えた可能性も否定できないからです。
先程も説明したように、自筆証書遺言が効力を発揮するためには遺言者本人が作成した遺言書であると認められなければなりませんので、正しい方法で訂正を行うようにしましょう。
遺言書が無効になったら
上記のようなミスによって遺言書が無効になってしまった場合、一般的に相続は、以下で取り上げる2つの方法のいずれかで進められることになります。
1.法定相続
法定相続は民法で規定されている割合に応じて相続財産を分ける方法です。
法定相続で遺産をもらうことができるのは被相続人の配偶者と血族のみで、被相続人との間柄が近い人ほどもらえる遺産の割合が大きくなります。
2.遺産分割協議
法定相続で示されている相続の割合はあくまでも一つの目安であり、もらえる遺産を話し合いで決めることも可能です。
これを遺産分割協議と言います。
遺産分割協議を行うことで「長男夫婦に介護を任せっきりだったから少し相続分を多くしよう」「遺言書は無効になってしまったけれど遺言者の意思を尊重して書かれていた内容に合わせて相続しよう」といったことが可能です。
ただし、遺産分割協議で相続分を決めるときはすべての相続人が同意しなければなりません。
同意が得られなければ、最悪の場合は最悪裁判ということになってしまいます。