遺言書では寄付の意思表示もできる
法定相続で相続人となれるのは配偶者や子どもなどの血族に限定されますが、遺言書があるならば話は別です。
相続では法定相続よりも遺言書のほうが優先されるので、遺言書の中に内縁の妻など配偶者や血族以外の人への財産分割が記されていた場合、遺言書の内容に則って財産分割が行われることになります。
遺言書があれば基本的には誰に対しても財産を分け与えることができるので、寄付をすることも可能です。
たとえば「自分の財産を親のいない子どもたちのために役立ててほしい」といった想いから慈善団体に寄付したり、「自然環境を守るために」という理由で自然保護団体などに寄付したりするといったものです。
寄付は法人だけでなく、特定の個人に対しても行うことができます。
遺言書の寄付には2種類の方法がある
このように、自分の死後に財産を寄付することを法律では「遺贈寄付」と言い、「特定遺贈」と「包括遺贈」の2つに分けることができます。
特定遺贈は「3,000万円をNPO法人◯◯へ遺贈する」「A市B町1-1-1に所有する不動産を遺贈する」というように財産を特定して寄付を行うものです。
一方、包括遺贈は「全財産の3分の1を◯◯株式会社へ寄付する」というように財産の一定の割合を遺贈する方法です。
注意したいのは、包括遺贈の場合はマイナスの資産があるときに、それも遺贈の対象になってしまう点です。
また、山林や農地など換価が難しい不動産が多いと他の受遺者との調整がつかずに手続きが長引いてしまう可能性もあります。
そのため、遺贈による寄付をする場合はできる限り特定遺贈の形で行うのが望ましいと言えるでしょう。
遺言書の内容が効力を発揮するための条件
遺言書を作成する場合は、自分の意志が確実に実現されるように十分に注意しなければなりません。
もしも不備な点があれば効力を失ってしまう可能性もあるからです。
とくに自筆証書遺言によって遺言書を残す場合には注意が必要です。
遺言書を作成した日付、遺言者本人が作成したことを証明するための署名や捺印がない遺言書はすべて無効となってしまいます。
また、遺言書は本人が自筆で書かなければ効力を発揮しません。
パソコンやワープロで作成したものや、他人に代筆をしてもらったものは無効です。
さらに寄付する不動産の住所が間違っている場合なども寄付ができなくなってしまいます。
確実に自分の想いを実現したいと思うならば、自筆証書遺言よりも公正証書遺言のほうがよいでしょう。
もうひとつの注意点は、遺言書の効力は遺留分には及ばないということです。
たとえば、「死後に自分の財産のすべてを◯◯に遺贈する」と遺言書に書いた場合、その内容が実現するのは法定相続人のすべてが遺言書に書かれている内容に同意したときのみです。
仮に相続人の誰かが異議を訴えて遺留分侵害額請求権を行使すれば法律に定められた遺留分が支払われることになるため、全財産を寄付するという内容は実現できないことになります。