民法改正に基づく配偶者保護の厚遇化(2019.7.1施行)
【問題点】
長年連れ添った夫婦の一方が亡くなった場合、残された配偶者に相続税の観点から厚遇すべきです。
しかし、残された配偶者に生前贈与や遺贈が行われていた場合、これまでは、その生前贈与と遺贈は、相続の際、相続財産として相続税の対象となっていました。
従来の<具体例1>
遺産 自宅の持分2分の1 4,000万円
預貯金 2,000万円
贈与 自宅の持分2分の1 4,000万円
合計 10,000万円
具体例1において、相続財産は、10,000万円
配偶者の法定相続分は、10,000万円*1/2=5,000万円
【条件】
婚姻期間20年以上の夫婦の一方が、生前、その居住用建物又は敷地を贈与又は遺贈していること。
【改正点】
生前に贈与又は遺贈した財産は、相続財産としない。
改正後の<具体例1>
遺産 自宅の持分2分の1 4,000万円
預貯金 2,000万円
合計 6,000万円
具体例1において、相続財産は、6,000万円
配偶者の法定相続分は、6,000万円*1/2=3,000万円
結論として、2019.7.1から、具体例1の場合であれば、従来5,000万円とみなされていた相続税が、3,000万円となり、2,000万円の節税となります。
【結論】
2019年7月1日から、生前贈与と遺贈は、相続の際、相続財産として相続税の対象とならなくなりました。
具体例1の場合であれば、2,000万円の節税となります。
民法改正に基づく自筆証書遺言の方式緩和(2019.1.30施行)
【問題点】 従来、自筆証書遺言は、「遺言者が、その全文、財産目録、日付及び氏名を自署し、これに印をおさなければならない。」とされていました。しかし、高齢者が全文を自署することはかなりの労力を伴うことから、自筆証書遺言の利用を妨げる要因となっていました。
【改正点】 自筆証書遺言の利用を促進する観点から、目録は自署することを要せず、他者にパソコン等を用いて作成を依頼できるようになりました。
【結論】 2019年1月30日からは、目録は自署することを要せず、他者にパソコン等を用いて作成を依頼できるようになったことから、自筆証書遺言がやりやすくなりました。 また、これに加えて、2020年7月10日から、「法務局における遺言書の保管に関する法律(以下、「遺言書保管法」といいます。)が成立し、法務局で、自筆証書遺言を保管してもらうように申し出ることができるようになりました。これにり、法務局で自筆証書を保管してもらうと、第一に、自宅で自筆証書遺言を保管に伴う紛失を防止できるようになりました。また第二に、これに加えて、従来の制度では、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要でしたが、遺言書保管法制度の下では、家庭裁判所の検認が不要となっています。
民法改正に基づく遺留分制度(2019.7.1施行)
【問題点】 従来、贈与や遺贈によって遺留分が侵害された者は、遺留分減殺請求権を行使することができました。すなわち、法定相続分は、確保できていました。しかし、遺贈等に係る現物を返還するか、それに代えて価額弁済をするか選択をするとさえていました。しかし、相手方(受遺者)が価額弁償を選択しないとき、自ら(遺留分権利者)は価額弁償を請求することはできませんでした。
【改正点】 今回の民法改正により、遺留分について、価額弁償(金銭債権化)することとなりました。
【結論】 2019年7月1日からは、贈与や遺贈によって遺留分が侵害された者は、遺留分について、価額弁償(金銭債権化)することとなりました。