亡くなった方に法定相続人がいない状態のことを、「相続人不存在」といいます。
生涯独身で配偶者や子どもがなく、兄弟姉妹もいない場合や、法定相続人が先に亡くなってしまった場合や、法定相続人の全員が相続放棄した場合に相続人不存在という状態になります。
近年増加している孤独死などの場合、このようなケースも珍しくありません。
このような場合、遺言書がないと相続されるべき財産は行き場を失ってしまいます。
そこで家庭裁判所は利害関係人等の請求により、被相続人の財産を管理したり、負債の清算を行ったりする「相続財産管理人」を選任します。
相続人不存在の場合の手続き
このような場合、まず利害関係人または検察官が民法952条1項に基づき、被相続人の相続開始を家庭裁判所に申し立てを行います。
利害関係人とは、債権者や特定受遺者(遺言で指定された遺産の受取人)、特別縁故者(亡くなった人と同一生計にあったり、介護に務めたりした人など)のような人のことを指します。
法定相続人がいない場合、遺産は相続財産管理人が管理し、他の人が処分することはできません。
相続財産管理人が選任された後は、官報で公告されます。
これは、相続人がいれば申し出るように促すためのものです。
2ヶ月後に、相続財産の債権者もしくは受遺者の確認の公告が行われた場合には、遺産からその人に支払われます。
この時点で遺産がなくなっていれば、手続きは終了となり、これ以上の公告等は行われません。
いなかった場合には、次に6ヶ月以上の期間を定め、相続人の捜索が行われます。
これでも相続人がいなかった場合、相続人不存在が確定となります。
相続人不存在の場合の遺産の行方は?
相続人不存在が確定したのちに、故人に生前深く関わりのあった特別縁故者が現れることがあります。
相続人不存在の確定後3ヶ月以内であれば、遺産の分与を行うことが可能です。
それでも残余財産がある際は、国庫に帰属することとなります。
また、特別縁故者も不在の場合も、遺産は国庫に帰属します。
いざというときのための遺言書
独居老人が増加している昨今、遺言書を残して死後の財産の行き先をあらかじめ決めておくことは重要です。
しかし身内がおらず、遺言書がなかった場合には、死後遺された人たちは遺産をどうすればよいのからず、困ることになります。
遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つの種類があり、いずれも民法の規定に従って書くことが求められます。
書き終えたら、行政書士など法律の専門家にチェックしてもらうようにしましょう。
遺言書を作成したことをエンディングノートに記しておいたり、遺言の相続者に伝えたりするなど、周囲に遺言の存在を知らせておくと、相続人不存在の場合でも周りの人に意志を伝えることができます。