サスペンスドラマや小説などでは、莫大な遺産をもつ人が亡くなったときに、突然勘当された子どもや蒸発した子どもが現れ、遺産の相続権を主張するというシーンがあります。
遺産の額が莫大でなくても、実際にこのようなケースは現実でも起こっています。
そもそも、勘当した子どもにも遺産は相続させなければいけないのでしょうか。
法定相続分は感情論で変更不可能
法律上、遺産の相続は故人や遺族の感情やそれまでの家族関係を考慮しません。
婚姻関係や血のつながりが遺産相続の権利・順位では何よりも重要です。
そのため、故人が勘当した子どもに対して1円も遺産を渡したくないと思っていても、子どもが遺産の相続を放棄しない限り、相続を阻止することはできません。
お子さんを勘当しなければいけない事態というと、相当深刻なトラブルや感情のもつれが考えられますが、遺族間の遺産分割協議を当人不在で勝手に進めることもできません。
家を飛び出していてしばらく音沙汰がない場合でもその義務は変わらず、まずはその方と連絡をとり、故人が亡くなったことや遺産があることを知らせる必要があります。
複数の配偶者との間に子どもがいるケースも考えられますが、これも現在の配偶者の間にできた子どもや離婚した配偶者の間にできた子ども、未婚の方との間にできた子どもの区別がありません。
いわゆる「愛人」との間にできた子どもや、「隠し子」といわれるような子どもも、認知があれば遺産相続の権利が認められます。
どうしても遺産相続させたくない人物がいる場合
遺言書を作成していても、血のつながりがある子どもには必ず法定相続分の遺産を受け取る権利が発生します。
遺産を絶対に譲り渡したくない場合、家庭裁判所に相続廃除という手続きを行う必要があります。
遺言で執行者を指名しておけば、死後に執行者が代わりに相続廃除の手続きを進めることが可能です。
相続廃除が家庭裁判所によって認められた場合は、その方の遺産を相続する権利が失われます。
遺産相続させないことを認められるケース
相続廃除によって特定の子どもに遺産を渡したくないという場合でも、必ず裁判所がそれを認めてくれるとは限りません。
民法でも相続廃除が認められる条件は決められているので、単に仲が悪い・勘当したといった理由では、相続廃除の正当な事由とならない点に注意しましょう。
具体的に相続廃除で遺産相続させないことが認められる事例としては、以下のケースが挙げられます。
- 生前故人に暴力を振るったり、虐待したりしていた
- 故人の財産を勝手に使い込んでいた
- 生前ギャンブルなどで借金を繰り返し親に多額の返済をさせていた
- 殺人などの重大な犯罪で有罪になった
これらは確かに社会通念に照らし合わせても、遺産を相続させない正当な理由と多くの方が納得する事例といえるでしょう。
相続廃除が認められるケースはかなり限定的で、単なる勘当だけで遺産相続の権利まで奪われることはないというのが実情です。