遺言を残すには
相続人に遺産の分配方法を明らかにする遺言書は、必ずしも法律の専門家に頼らなくても作成できます。
法的に定められた書式であれば、自筆証書遺言といって被相続人の意思を自由に連ねたものでも有効です。
手書きという原則にのっとっていれば、用紙は定められていませんので、メモ帳などに記したものでも遺言書として法的な効力をもたらします。
近年では民法の改正により、遺言書に添付する財産目録の作成に、パソコンを使ってデータを作成することも認められるようになりました。
その一方で、遺言書そのものは自筆による手書きを原則としていることに変わりはなく、電子メールなどで意思を伝えていたとしても、法的には有効ではありません。
またパソコンで遺言書の文章を作成して印刷したものに自筆の署名や捺印をしても、遺言書としては無効です。
自分自身の手で書くことのみが法律で定められた作成方法であり、動画や音声データによるものは遺言として認められることはありません。
正しい遺言書の書き方や形式について
遺言書に記載すべき最低限の項目は、遺言書を作成した日付と遺言者の氏名です。
これらは手書きによるものと法律で定められており、遺言書には押印も必要です。
正しく意思を伝えるための遺言書本文においても、全文自らの手書きによって執筆しなければなりません。
当然ながら動画や音声も電子データであるために、パソコンで作成した文章と同じく遺言書として法的に認められることはないのです。
遺言として法的に無効とされるケース
民法で遺言書の作成方式は厳格に定められており、自筆証書遺言は自筆によって遺言書を作成する必要があります。
被相続人自身が病気などによって執筆が困難な場合は、公証人に委ねられる公正証書遺言によって遺言を作成するとよいでしょう。
自らの意思を伝えたいという思いが強くても、スマートフォンなどで撮影された動画や音声は法的な効力をもたないことを、十分に理解しておかなければなりません。
ただし、法的には無効な動画や音声ですが、話し合いの参考になる可能性はあります。
ミドル世代や高齢者にもスマートフォンは広く普及しており、写真だけではなく動画の撮影などが活発に行われる時代になりました。
メールなどの文章のやりとりだけではなく、スマホやパソコンを通じて、お互いの顔を見ながら音声で会話する機会も増えてきていきます。
このような時代背景から、スマホで撮影した動画やメッセージが遺言書となり得るのか疑問を抱く方も少なくないようです。
しかし動画も音声も法的には効力がないため、メッセージ動画は相続手続きの場において参考にされる程度のものでしょう。
有効となる遺言書を作成するうえで疑問に思うことがあれば、気軽に法律の専門家に相談しておいて損はありません。
正しい知識をもとに、円満に遺産分割協議が行える遺言書のアドバイスを受けられます。