遺言書とは被相続人が死後の財産分与などについて意思を記す書類のことで、主に3種類の形式があります。
被相続人が自身で記す自筆証書遺言、公証役場において公証人によって作成される公正証書遺言、秘密を守って誰にも内容を知らされたくない場合に使われる秘密証書遺言の3つの形式です。
秘密証書遺言については公正証書遺言と同じく公証役場で作成できるものの、実際に使われているケースが少ないため、自筆証書遺言と公正証書遺言の2形式による代筆の可否について説明します。
代筆による自筆証書遺言の有効性について
自筆証書遺言とは、文字通り被相続人が自身で意思を綴ることが原則とされる遺言書の作成方式です。
自らが筆をとり紙に記すことを原則としているため、代筆による遺言になると法的には無効となってしまいます。
しかし身体の不具合により文字が書けないなど、やむを得ない事情があるかもしれません。
このような場合には公証人による代筆が認められているため、公正証書遺言によって遺言書を記す選択肢が残されます。
自筆証書遺言よりは費用が高くなってしまうものの、遺言書が無効になってしまうリスクを回避できます。
家族同士のトラブルにつながりやすい相続に関する遺言書については、特に専門家に相談して作成を依頼するほうがおすすめです。
公証人が作成する公正証書遺言は、遺言書を代筆したい場合に有効な手段です。
高齢などを理由に自筆の遺言書を作成することが困難な場合にも、代筆を公証人に依頼する公正証書遺言により作成するほうがよいでしょう。
遺言として伝えたい内容を公証人に口頭で伝えれば、公証人が代わりに執筆するため、有効性は自筆証書遺言と何ら変わりはありません。
公正証書遺言は基本的に公証人役場で作成されますが、入院していたり自宅で療養していたりと公証人役場に赴くのが困難な場合には、出張してもらうことも可能です。
突然の入院など緊急を要する場合の遺言書の代筆について
遺言書は民法上、遺言を伝えたい当事者本人の自筆であることが原則となっています。
しかしながら、急病などにより死亡の危機が迫ってしまった場合などには、特別な方式が認められる場合があります。
一般危急時遺言といわれる方式は、一般的なものではありませんが、自分で文字を書けない場合など、緊急時にだけ利用できる法的な手段です。
しかし一般危急時遺言を選択する場合にも、複数の要件を満たさなければなりません。
証人として3名以上が立ち会うことなどの基本条件はもちろん、遺言書を作成した日から20日以内に家庭裁判所による手続きを開始することなど、条件はさまざまです。
さらに、一般危急時遺言を作成していても、自筆できる体調にまで回復すれば有効性が失われるといった条件も加わります。
急な場合であっても遺言書の作成の代筆については、法律の知識を有する専門家に相談することが望ましいといえるでしょう。