遺産相続手続は自分でできる?専門家に依頼した方が良い場合についても解説

一般に「遺産相続の手続は複雑」と言われます。専門知識のない一般の人には不可能、と思い込んでいる方もいるかもしれません。では実際のところ、遺産相続手続を自力で行うことはできるのでしょうか?この記事では遺産相続手続の内容と、自分で行うメリット・デメリット、手続を専門家に依頼した方がよい場合について説明していきます。

 

遺産相続手続は大変?

遺産相続手続は、本当に世間で言われるほど大変な手続きなのでしょうか?結論から先に言うと、遺産相続手続が大変かどうかは相続人の数や相続財産の金額などの条件によって変化します。

遺産相続手続に必要なものは「知識」「時間」「手間(労力)」そして「費用」です。

まず知識には、相続人や相続財産の調査に必要な書類の種類や取得方法を知っているか、遺産分割協議書の作成方法を知っているか、遺言書の取り扱い方を知っているか、相続登記や相続税の申告手続の方法を知っているか、などが含まれます。

時間と手間(労力)は、必要な書類を収集・作成したり、他の相続人と話し合いをしたり、法務局や税務署で手続をするために必要なものです。

費用とは、役所で各種書類を発行してもらう際の手数料や遺産登記の登録免許税、相続税、専門家に依頼する場合の報酬などを含みます。

加えて、遺産相続手続がスムーズに進まない場合(特に他の相続人との交渉が難航しているような場合)は、それが大きな「ストレス」になる可能性も忘れてはいけません。

知識と時間と手間とストレス、これらを「大変」とみるか「簡単」と感じるかで、遺産相続手続の難易度は大きく変わります。

 

相続登記のパターン

遺産相続手続の中心は「相続登記」です。相続登記には大きく分けて3つのパターンがあり、それぞれのパターンごとに難易度が変わります。

①遺産分割協議で相続登記をする
最も難易度の高いパターンですが、多くの相続登記がこれに該当します。詳しくは後ほど説明しますが、相続遺産の分配を相続人同士で話し合い、合意した内容通りに相続登記をするというものです。

②遺言書に従って相続登記をする
被相続人が遺言書で遺産の配分方法を指示している場合のパターンで、遺産分割協議より難易度が下がります。ただし法定相続人の相続分が法律で決められたものより低く、本人がそれに不服の場合は分配の見直しを請求されたり、家庭裁判所に訴訟を起こされる可能性もあります(遺留分侵害額請求訴訟)。

関連記事:『離婚は遺産相続に影響する?配偶者と子それぞれの相続権について解説
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③法定相続分で相続登記をする
法定相続分通りに(機械的に)遺産を配分するもので、最も難易度が低いパターンです。ただし不動産については共有名義で登記したり「分筆登記」することになるため、そちらの手続に手間がかかります。場合よっては、将来土地や建物を売りたいときに不都合が発生する場合もあります。

 

遺産相続手続を自分でする場合

遺産相続手続を自分で行うことは、決して不可能ではありません。すでに説明した通り、条件次第では難易度もそれほど高くありません。ここでは自分で遺産相続手続を行う場合のメリット・デメリットと、自分で手続をすべきかどうか判断するためのヒントを説明します。

 

メリット

自分で手続をする最大のメリットは「費用が安くなる」ことです。具体的には、行政書士などの専門家に支払う報酬(平均して5〜20万円程度)を浮かせることができます。ただし、各種書類の取得にかかる手数料や登録免許税、相続税などは必要です。

 

デメリット

自分で手続をするデメリットとしては、時間や手間がかかること、(知識不足により)ミスをしてしまう可能性があることなどが挙げられます。また他の相続人との交渉が難航している場合は、大きなストレスを抱えることになるかもしれません。

ちなみに市役所や法務局の窓口は、一般に「平日の8時30分〜17時15分」のような時間指定があります。特に平日の日中に会社勤めをしている人であれば、申請や修正のたびに窓口に出向くのは困難でしょう。

 

判断のヒント

自分で手続をするか、専門家に依頼するかの判断はひとそれぞれです。どの程度の専門知識を持っているか(書籍などで勉強できるか)、平日の日中に時間を確保できるか、手間や労力がかかってもかまわないか、他の相続人は協力的かなど、個別の事情に合わせて判断すると良いでしょう。

参考までに、

  • 相続人が配偶者だけ、もしくは配偶者と子供だけ
  • 時間の融通がつきやすい
  • 細かい作業やストレスに強い

といった条件が揃っている人なら、個人での手続きに向いていると考えられます。

 

遺産相続手続の流れ

ここからは遺産相続手続のおおまかな流れと内容について説明します。

 

①相続人の調査

相続が発生(被相続人が死亡)したら相続人について調査をします。具体的には自分以外にも相続人がいるかどうか、その人たちが存命かどうかの調査です。

相続人の調査は、公文書を取り寄せて厳密に行います。まず必要なのは以下の公文書です。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本
  • 被相続人の住民票(除票)

取り寄せた戸籍で被相続人の配偶者、子や孫(直系卑属)、親や祖父母(直系尊属)、兄弟、甥姪など法定相続人(候補)の範囲が確定できたら、次にそれらの人たちに関する戸籍謄本と住民票(本籍が記載されているもの)を取り寄せます。

すべての公文書を取り寄せたら「相続関係説明図」を作成します。これは相続登記の際に必要です。

 

②相続財産の調査

相続人の調査と前後して、相続財産の調査も行います。具体的には預貯金などを含む動産の確認、そして所有する不動産の確認です。なお忘れがちですが、借金(債務)の有無や金額もきちんと調べる必要があります。

相続財産の調査も公的な証明書や公文書で行います。たとえば以下のような書類が必要です。

  • 金融機関の残高証明
  • 登記全部事項証明書
  • 固定資産税評価証明書)
  • 名寄帳

もちろん被相続人が不動産を所有してなければこれらの文書を取り寄せる必要はありませんが、「相続人が知らないだけ」ということもあるため、念のため法務局で確認しておきましょう。

すべての公文書を取り寄せたら「遺産目録」を作成します。

 

③遺産分割協議

被相続人が遺言書を残していなかった場合、あるいは遺言書に遺産の分配について指示されていない場合は、相続人同士で遺産分割協議を行います。遺産分割協議は原則として、すべての法定相続人が参加しなければなりません。

遺産分割協議では相続財産の具体的な分配方法が話し合われます。参加者全員の合意がとれたら「遺産分割協議書」にまとめ、全員が署名・捺印(実印)をします。遺産分割協議書は銀行口座の払戻手続に必要となるほか、相続登記の際も全員の印鑑証明書と一緒に提出します。

関連記事:『他の相続人に遺産相続手続の「お礼」は必要?お礼の相場やお礼状の例文も紹介

 

④預貯金の払戻・名義変更など

被相続人の銀行口座は、被相続人の死亡を銀行が把握した時点で凍結されます。ただし遺産分割協議書が完成すれば、凍結の解除と預金の払戻や口座名義の変更が可能になります。

同じように株式などの有価証券の名義変更や保険・年金関係の手続(連絡)、自動車などの名義変更も早めに済ませておきます。

 

⑤相続登記

被相続人や相続人についての公文書、相続財産(特に不動産)についての公文書、相続関係説明図、遺産目録、遺産分割協議書(もしくは遺言書)などが揃ったら、不動産の相続登記を行います。

なお相続登記の申請書は、法務局のホームページか窓口で入手可能です。
外部リンク:不動産登記の申請書様式について

相続登記には3つの方法があります。

①法務局で申請
相続不動産の所在地を管轄する法務局に出向いて手続を行います。なお法務局では「登記手続案内」サービスを行っているいて、申請手続に不明点がある場合は事前相談も可能です。

ただし法務局の窓口が開いているのは「平日8時30分から17時15分まで」なので、平日の日中に時間が取れない方にとっては難しい方法でしょう。法務局が自宅や職場から遠い場合は、移動時間や交通費も余計にかかります。

②郵送で申請
申請書一式を郵送で提出します(管轄法務局あて)。時間に関係なく書類提出できますが、もし書類に不備があってもその場で指摘してもらうことができません(もちろん「登記手続案内」も利用できません)。なお書類に不備が見つかった場合は、法務局から電話で連絡があります。

③オンライン申請
自宅のパソコンに「申請用総合ソフト」をインストールして、インターネット経由で電子申請を行います。申請できる時間帯は「平日8時30分から21時まで(国民の祝日・休日、12月29日から1月3日までの年末年始を除く)」です。なお書類に不備が見つかった場合もオンライン上で補正できます。

ただし申請用総合ソフトをインストールできるパソコンはWindows8.1かWindows10に限られ、さらに事前に電子証明書も取得しておく必要があるなど、ある程度のIT知識が必要です。
外部リンク:不動産の所有者が亡くなった(相続の登記をオンライン申請したい方)

いずれの方法で申請する場合も、書類提出に合わせて「固定資産税評価額の1000分の4」の登録免許税を納入します(例:評価額1,000万円の土地なら登録免許税は4万円)。

 

⑥相続税の申告

相続登記が終わったら、必要に応じて相続税の申告をします。申請期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。

なお、相続税には法定相続人の数と相続財産の金額に応じた「非課税枠」があります。原則として、以下の基準に当てはまる場合は相続税の申告は必要ありません(ただし配偶者控除などを利用する場合は、相続税の金額に関係なく申請が必要です)。

法定相続人の数 非課税となる基準
1人 3,600万円以下
2人 4,200万円以下
3人 4,800万円以下
4人 5,400万円以下

 

 

相続放棄する場合の注意点

相続放棄とは、相続人(法定相続人)が遺産分割協議に参加する権利を放棄する意思表示のことです。相続人が家庭裁判所で所定の手続をすると、その後はプラスの財産・マイナスの財産(借金など)を含む一切の相続権を失います。

手順①財産調査
手順②書類の準備
​​手順③家庭裁判所への手続

なお相続放棄の手続は、相続の発生(被相続人の死亡)から3か月以内に行わなければいけません。この期間を過ぎると手続を受け付けてもらいないため、注意してください。

関連記事:『​​遺産相続を放棄した場合に謝礼は必要?謝礼金(ハンコ代)の相場は?

 

まとめ

遺産相続手続の難易度や、手続にかかる時間や手間、お金などは「自分でやるか、専門家に依頼するか」によって変わります。もし相続が発生したなら、相続人の数や相続財産の金額、親族との関係、そして自分の仕事などの都合に合わせて「誰がやるか」を判断すると良いでしょう。

 

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